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 Photo essay<入間川写真紀行>

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2013

2006.11.3(金)晴れ。入間川九番、関越橋。九時半から十二時。

入間川歩行を再開しよう。

左岸、関越橋付近、自転車道脇に車を止める。土手を、初雁橋へ向かって歩く。犬の糞だらけ。踏まないように気をつける。

散歩に来た犬が、気持ちよくなって、便意を催す。ま、致し方ないことだ。問題は、飼い主だ。道の真ん中で、どうどうとさせている。しかも、後片付けをしない。まったく、マナーが悪い。

久しぶりの歩行なのに、はなから、ケチがついた。見晴らしのいい、広い土手をゆっくり歩く。当初の思惑が、犬の糞でだいなし。しらけてしまった。

戻りは、自転車道を歩いた。道沿いの万年塀、工業団地のプラント、それに、鉄塔。なじみの景色を何枚か撮った。

車に戻った。このまま引き上げるには、早すぎる。それに、まともな写真が、一枚もない。多少疲れていたが、関越橋の下へおりていった。

潅木が、植物に覆われている。かたちが面白い。何年か前にも、同じ場所で、おなじ光景を見た。たしか、小鳥が出入りしていた。

位置取りを変えながら、モニタニングを繰り返した。明かりが、やや斜光。なに、かまうものか。まっていられない。






写真紀行の原稿が、五回分、溜まっている。もうこれ以上、延ばすわけにはいかない。日時と場所だけ書いて、先に進もう。

2006.11.5(日)晴れ。入間川九番、関越橋。大東小裏。十一時から一時。

2006.11.10(金)晴れ。最高の秋晴れ。入間川九番、関越橋。尚美音大前。九時半から十二時。





2006.11.12(日)晴れ。入間川九番、関越橋。尚美音大前。九時半から十二時。





2006.11.13(月)晴れ。入間川九番、関越橋。豊田本。九時半から十一時。





2006.11.15(水)晴れのちくもり。入間川九番、関越橋。右岸、水上公園裏手。





2006.11.16(木)晴れのち曇り。入間川九番、関越橋。小室付近。十時から十一時半。

水上公園と西郵便局との間の広い道。川越の市街地へ向かって、右手が豊田本、左手が小室。どちらも広い農地だ。道路わきの、少し広くなったところに、車を止める。

あぜ道を、ぶらぶら歩き出す。ポンプ小屋も、いささか飽きた。なにか、ほかにないのか。目に付いたのが、菜園の小菊たちだ。





なぜか、色の鮮やかなものに、惹かれてしまう。今度は、赤い縞の鉄塔、それに、ピンクや黄色の、新建材のアパート。そこに、先ほどすれ違った、小学生たちが見える。ブルーの帽子が、チョコチョコ動いている。ゴミ袋などを持っていたから、清掃活動をしているのだろう。気持ちが、和んだ。





いい天気だから、もうすこし歩きたい。ところが、どうも調子がよくない。いくらも歩いていないのに、かなり疲れている。それに、また、胸の違和感。昨晩からだ。血圧があがっている。無理をしないで、引き上げよう。





2006.11.18(土)晴れ。午後からはくもり。入間川九番、関越橋。小室、西郵便局裏。九時半から十一時。

西郵便局通り。農道への入り口に車を止める。きのう撮った赤縞の鉄塔が、正面に見える。じっと見る。家並みに垂直。ただし、距離がある。200ミリの望遠で、ファインダーをのぞく。

気をつけることは、画面に対しての、鉄塔の垂直。しかし、これが曲者だ。目視とは違い、ファインダーで見ると、鉄塔と家並みは、垂直に交わっていない。鉄塔の垂直を確保すれば、家並みの水平が保てない。逆に、家並みの水平を確保すれば、鉄塔が傾く。

何かの本で読んだことがある。頭が、実際に見えているものを、なかば無意識に修正している。観念が、感覚を支配している。

目視の錯誤を、カメラが教えてくれる。人間の目は、正確なようで、不正確だ。もっとも、カメラの目だって、正確なようで、かなりいい加減だ。周辺部の歪曲収差は、いかんともしがたい。

四の五の言っても始まらない。モニタリングを繰り返し、何十枚も、同じような構図で撮った。大丈夫だとおもったが、はぁ〜、ため息が出る。全滅だ。パソコンの画面で見ると、家並みの水平が取れていない。微妙に傾いている。違和感がありすぎる。鉄塔の垂直に気を取られすぎた。

水平な地面に、鉄塔が垂直に立っている。しごく当たり前のことだが、そういう光景は、まずない。鉄塔の周りを360度回って、探すしかない。とはいえ、明かりの具合からして、そんなことをしても、無駄だ。となると、あとは、偶然の出会いを期待するしかない。





2006.11.21(火)晴れ。風もなく、比較的あたたかい。入間川八番、初雁橋。十時半から十二時半。

川越公園、修景池の前に車を止める。エプロン型のバルコニーから、池の中をのぞく。鯉がよってくる。真っ白なやつが目に付く、ほかにも、赤の斑が何匹もいる。あっという間に、数え切れないほど集まった。

水は、さほど汚くない。どろんとした緑色。鯉は、みな、丸々と太っている。そのせいか、動きが緩慢。なかに、口の横が白くなっているのが二匹いる。鯉ヘルペスかもしれない。

入間川の鯉は、驚くほど俊敏で、こちらが気づく前に、バシャッと音を立て、深みへと消えてしまう。それにひきかえ、池の鯉は、人が来ると、寄ってくる。これみよがしに、餌をねだる。面白みがない。

ぶらぶら歩き出した。自然と、ボート乗り場へ向かっていた。白鳥型のボートが、きれいに並んでいる。気になって、何度か写真に撮ったこともある。だが、もういいだろう。

そのまま、公園の縁を歩いて、入間川の土手に上がった。横を見ると、水門脇の階段に、黒っぽい男が座っている。先客か、しょうがない。土手を下り、初雁橋の下へ行った。橋の補修工事も終わり、辺りが、見違えるほどきれいになっている。

橋の下は、薄暗くて、じめじめしていた。周りには、背の高さほどの雑草が生い茂り、雑木林の中は、ゴミだらけだった。それが、健康的な空間に生まれ変わった。散歩やウォーキングの中高年で、にぎわっている。

ホームレスの食い散らかした弁当や、エロ雑誌が散乱しているよりはいい。自由に、気兼ねなく、散策を楽しむことができる。とはいえ、あまりにオープンになりすぎて、ちょっと物足りない。またひとつ、秘密の場所が消えうせた。






2006.11.22(水)晴れのち曇り。入間川八番、初雁橋。九時半から十一時半。

左岸、的場浄水場裏に、車を止める。土手に上る。風もなく、いい天気だ。水門や橋などを撮る。

補修工事の終わった初雁橋を、ゆっくり眺めた。橋脚は、全部で十本。ずんぐりむっくりした、コンクリの打ちっぱなし。別に違和感はない。問題は、橋梁だ。よくよく見ると、これも、コンクリの打ちっぱなし。

入間川の橋の色は、青系統が多い。唯一、初雁橋だけが、のっぺりした灰色。名前は、一番いいのに、形や色が無粋で、写真にならない。

真下から、橋の裏側を見上げた。空間が、黒い網で仕切られている。すぐに、ピンときた。鳩が住めないようにしている。

以前は、鳩がいっぱい居た。橋の裏側は、格好の住処だった。管理、保全上、鳩たちも一掃されたわけだ。ほんとうによく気が回る。ついでに、橋の景観についても、考えたらいい。いいや、橋などは、壊れなければいい。日本人は、いつから、そんなふうになってしまったのか。

橋という建造物は、ただただ、頑丈で壊れなければいい、というものではない。もっと象徴的な意味がある。だから、古来、人間は橋の造作に心血を注いできた。美しい橋が、数多くある所以だ。

初雁橋。名前を聞いただけで、渡ってみたい気がする。美しい橋であってほしい。






2006.11.24(金)晴れ。風が冷たい。寒い。入間川八番、初雁橋。十一時から十二時。

午前中は用足し。出るのがおそくなった。今日も、的場浄水場裏に車を止める。寒い、とおもったが、暖かいウォームアップ上下を着ている。大丈夫だろう。そのまま、県道に出て、橋を渡り始めた。

撮りながら、橋の中ほどまで行った。寒くて、しょうがない。迂闊さを反省しながら、ダウンパーカーを取りに、車へ戻った。十一月だと思って、油断していた。真冬の寒さだ。

寒くなると、橋の上は、きまって、凍りつくような北西の強風。着込まないと、五分と居られない。まだ、手がかじかむほどではないが、それでも、撮っているうちに、寒気がしてきた。風邪を引きそうだ。

初雁橋の上から、川越線鉄橋を撮る。これまでにも、数え切れないほど撮っている。だが、これといった写真が、一枚もない。なんとかならないものなのか。






2006.11.25(土)晴れ。小春日和。入間川八番、初雁橋。九時半から十一時半。

今日もまた、的場浄水場裏に、車を止める。念のために、ダウンパーカーを羽織っていく。橋の中ほどで立ち止まる。昨日の構図を、目で確認する。百ミリで、川の中の三本の橋脚を入れる。しつこく、また撮る。そのあとも、少しずつ、位置取りを変えながら撮る。二百メートルほどの橋を、小一時間かけて渡った。

右岸の土手下に、小道がある。それをはさむようにして、真っ白な水深柱が、二本立っている。撮っていると、脇をひっきりなしに人が通る。そのたびに、道を譲る。煩わしいけど、しょうがない。ほかの人にとっても、大切な小道だ。

他人の人生なんか、知ったことではない。けれども、小道を歩くのは好きだ。人の想いが、堆積している。






2006.11.29(水)晴れ。雲が多い。入間川八番、初雁橋。九時半から十二時半。

左岸、的場浄水場裏に車を止める。橋を渡り、右岸の土手に入る。土手下の小道は歩かずに、そのまま、土手の上を行く。ちょっとした広場になっている。遊具や砂場、ベンチや東屋などがある。

東屋が、男に占領されている。そばに自転車があり、手荷物がいくつもベンチに置かれている。ホームレスのような気もする。そ知らぬ顔をして、脇を通り過ぎる。

土手は、すぐに、川越線によって、中断される。そこに、生垣がある。北側と西側を囲っている。日向ぼっこには、格好の場所だ。

近づいていくと、自転車がとまっている。荷物が、周りに取り散らかっている。ホームレスがいるのかな?そう思った瞬間、地面の細長い荷物が動いた。おっと、人間だ。仰向けのまま、防寒ズボンを、無造作に脱ぎ捨てた。なるほど、陽が当たってきて、暑くなったわけか。

いつもなら、舌打ちしながら、通り過ぎるところだ。だが、今日は、柄にもなく、同情心が湧いた。風が来ない、といっても、土手の上だ。寒くないはずはない。それを、毛布一枚掛けずに、横になっている。おそらく、昨晩は、寒くて寝られなかったのだろう。それにしても、この先、いったいどうやって、暮らしていくんだ。寒風吹きすさぶ入間川、秩父颪は冷たいぞ。

ホームレスの顔は見えなかった。掌で、顔を覆っていたからだ。仰向けになって寝ているから、太陽がまぶしいわけだな。いや、そればかりじゃないかもしれない。迂回。土手を下りながら、他人の人生を、ふと想った。






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