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 Photo essay<入間川写真紀行>

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2013

2006.9.2(土)晴れ。風がさわやか。入間川十三番、狭山大橋。九時から十一時半。

寄り道。おととい撮り損ねた、上奥富の鉄塔が気になる。





その後は、まっすぐ、狭山市清掃センターの裏へ行った。公園があり、駐車場に車を止めた。いまだに、名前すら知らない公園だが、ここを歩かないことには、先へ進めない。

対岸の景色も見えない。園内に、見るべきものもない。ただし、柵を越えて、水際までいける。そこに、軍艦ブロックがある。あの上に載って、川シモの景色を眺める。写真にはならないが、やはり、この目で確かめたい。

入間川歩行。名前も順路も、すべて、自分で決めたことだ。しかし、だからこそ、必要以上にこだわる。いい加減にはできない。どこか、天空に、花を挿す行為に似ている。昔よく読んだ、劇作家の言葉だ。

木陰を選びながら、園内を一周した。草がきれいに刈り取られている。人影はない。カラスとゴミが目立つ。以前来たときには、ラジコン中年たちが、木陰に陣取っていた。園内の芝生を滑走路代わりにしている。ふん。苦々しく思ったものだ。

突然、オートバイの音。バイク野郎が、向こうからやってくる。あきらかに、道を間違っている。公園は、行き止まり。ぬけられない。案の定、すぐに引き返してきた。自分のすぐそばに、バイクを止め、あわてて、走っていく。何事かと思えば、川原の草むらから、仲間が引き返してきた。はは〜ん。軍艦ブロックの脇を抜けていくつもりだな。

知らん顔して、脇を通り過ぎた。しばらくして、バイクの音も聞こえなくなった。どれ、行ってみるか。柵の外、護岸沿いの、草深い小道。少し行くと、視界が開ける。水際に、軍艦ブロックがあり、対岸に、ホームレスの掘っ立て小屋が見える。

河原への降り口、草むらに、自転車が置いてある。きれいだ。放置されている感じではない。ま、いい。そおっと、軍艦ブロックに近づき、上に這い上がった。どこかで、しわぶきが聞こえたが、気のせいだろう。辺りに人影はない。

巨大なコンクリートの塊。中が空洞の直方体を、いくつも、つなぎ合わせた代物だ。少し傾いているが、空母の甲板に似てないこともない。来るたびに、面白半分に撮っている。

音を立てずに、そおっと歩く。先端まで行き、川シモを、ゆっくり眺める。それが、決まりごとだ。立ち止まる。川の中を覗き込む。げえ〜。あろうことか、禿頭が目に入った。ジジイだ。新聞を広げている。

今度は、忍び足で、戻った。悪いことをした子供のようだ。自転車、しわぶき。なるほど、ジジイの仕業だったのか。びっくりさせるなよ。まったく、なんで、あんなところにいるんだ!

車に戻った。引き上げるには、まだ早すぎる。というよりも、絶好の写真日和だ。もうすこし粘ろう。

来た道を戻った。入間川大橋を渡り、左折。柏原ニュータウンから、左岸に入り込んだ。自転車道に並行している川原道を、狭山大橋へ向う。途中、土手際に、キクイモの花が咲いていた。葉っぱは、しわっとしているのに、花は、強い日差しに、動じない。そこへ、さわやかな風。見上げれば、空が青い。白帯のような雲が、真一文字だ。






2006.9.3(日)晴れ。日差しが強い。入間川十三番、狭山大橋。九時から十一時半。

柏原ニュータウンから、左岸へ入る。自転車道沿いの川原道を、川カミへ向かって流す。気になっているのは、水門付近の自転車道だ。その辺りの景色が、どうしても思い浮かばない。ちゃんと歩いたことがないのかもしれない。

車を、水門の少し手前の道端に止めた。暑いなと思いながら、土手に上がった。桜並木になっている。見覚えがある。木陰で涼しい自転車道だ。ただし、視界がない。歩いてもしょうがない。前来たときに、そう思った。

問題はその先だ。このまま、歩いてもいいが、かなり暑い。少しの距離なのに、横着をした。また、車に戻り、堰の手前まで流した。ちょうどいい、道が少し広くなっている。車を止めた。

自転車道を、今度は、川シモへ向かって、歩き出した。桜並木はきれ、両脇がすっきりしている。とはいえ、写真に撮るような景色はない。ま、いい。ぶらぶらいくとしよう。

先ほどすれ違った、アジア系のおばさんが、また戻ってきた。携帯を耳につけながら、何か聞きなれない外国語を話していた。雰囲気からして、艶っぽい話だ。ごつごつした顔、色が浅黒く、化粧が浮いている。小柄で、がっしりした体つき。胸の大きく開いたTシャツを着ていた。こんども、通りすがりに、チラッと見た。フィリピン系だな。

自転車道沿いに、緑のフェンスが張られていた。一箇所、扉があり、開いている。見ると、空き地の中に、小道が続いている。散歩道だ。ふと、気になり、何枚か撮った。





移動。白いオカメインコが行方不明。自転車道沿いにあった物置に、張り紙がしてあった。ペットの捜索ビラは、ほとんどが手作りだが、あれはちがったな。飼い主が思いつめて、業者に頼んだ。日本動物探偵社、とあった。張り紙が、かなり古びていたから、かなり前の話かもしれない。おそらく、なにか、可愛い声で、しゃべったのだろう。しかしながら、白いオカメインコは、いまだに、行方不明のままだ。

川原道を右折する。すぐに突き当たり。こじんまりした沼があり、釣り場になっている。常連達が、自主管理しているらしく、注意書きなどがある。ジジイたちの溜まり場だ。そのすぐ先に、ホームレスの掘っ立て小屋が、何軒かある。見てみないフリをして通り過ぎると、視界が開けた。

右手は、河原。左手は、運動公園。護岸に沿って、デコボコ道を、ゆっくり走る。運動公園では、少年たちのサッカー、そして、野球。好きな光景なのだが、なかなか写真にならない。ポイントを探しながら、車でゆっくり流す。





運動公園が終わり、入間川大橋の下。行き止まり。以前は、橋の下を抜け、さらに、川シモまでいけた。鉄の仮橋があり、ほそい川原道が、右岸と左岸をつないでいた。以前撮った写真が、脳裏をよぎる。外に出た。護岸沿いに、キクイモの花が咲いている。どれ、また撮らせてもらおうか。






2006.9.5(火)晴れ。入間川十二番、入間川大橋。九時から十二時。

安比奈新道から入って、入間川大橋を渡る。渡りきった所の信号を左折。少しいくと、左手に、川原への入り口がある。おや、真新しい案内板がある。下奥富運動公園。新しくできたグランドの名称だ。

車止めをすり抜けると、すぐに、川に突き当たる。以前は、ここに、鉄の仮橋があった。車を止め、外に出た。護岸際に、キクイモの花が咲いている。撮らないわけにはいかない。





車に戻り、川原道を、川カミへ流す。新しいグランドが気になる。縁に、自分より背の高いキクイモが、何株も揺れている。いちおう、見てみよう。適当なところに車を止め、歩き出す。風が吹くと、近くの牛舎や養鶏場の臭いがした。荒地が、大きな木を一本残し、跡形もなく消えてしまった。べつに、心が痛む、というわけではない。さほど、愛着のある場所ではなかった。

グランドの間に、広い通路がある。大きな木は、その真ん中に立っていた。なるほど、多少、景観を考えたな。人間の気まぐれで、かろうじて伐採をまぬがれた。いっそのこと、俺のことも、切ってくれ。自分が、大きな木だったら、そう叫んでいたかも知れない。いや、ちがうだろう。生き延びた幸運を、天に感謝するべきだ。

その、大きな木の、少し先に、簡易トイレがある。近づいていくと、正面に、何か張り付いている。ステンレスの鏡だ。顔を近づけると、自分の顔が映った。安物の麦わら帽子に、グリーンのロンT。首の周りには、黒の綿マフラーを巻いている。どうにも、ぱっとしない格好だな。一枚、記念に撮った。さて、行くか。向き直った。大きな木が、目の前にある。見上げた。葉が生い茂っている。立派だな。今度は、慎重にシャッターを押した。

いちおう、グランドの縁を歩いてみた。これといった景色は、どこにもない。ぶらぶら、護岸を歩いて、車に戻った。ちょうど、川シモが順光になる時間帯だ。多少暑いが、橋の上を歩いてみよう。





2006.9.7(木)曇り、一時晴れ。入間川歩行はお休み。

写真紀行の原稿が、滞っている。ちょうどいい。朝からパソコンに向かう。十二時前に、土曜日分を仕上げる。少しほっとした。気分転換に買い物。日高のベイシアへ行く。迷っていた、アディダスのウェストポーチを買う。気分がいい。

昼食は、吉野家で豚丼。みると、店内にビラ。牛丼復活!ただし、一日だけだ。試験的なものだろう。とはいえ、アメリカ産牛肉の輸入が再開されている。今度は、問題がなさそうだ。牛丼がメニューに戻るのも、時間の問題だろう。

となると、この豚丼はどうなるのか?まちがいなく、消えて無くなる運命にある。はじめは違和感があったが、最近は、すっかりこの味に慣れてしまった。ちょっとだけ、名残惜しい。ゆっくり、味わって食べた。





2006.9.9(土)曇り、一時晴れ。入間川歩行はお休み。

気分転換。朝から、大宮のGAPへ買い物。夏物のセール品は、ほとんどなかった。それでも、ブルーのポロシャツが安かったので、つい買ってしまった。もう、ポロシャツは着ない。そう決めていたが、ま、いいだろう。意固地になることもない。

店内には、秋冬物の、アウターがたくさん出ていた。みな、色が濃い。さほど、欲しいとは、思わなかった。ジャケット類は、かなりもっている。底値になる、来年まで待つつもりだ。それにしても、店内が暗い。パッとしない。志木の店へ鞍替えしようか?帰りの車で、考えた。





2006.9.10(日)晴れ。雲が多い。むし暑い。入間川十二番、入間川大橋。九時から十時半。

なんとなく、やる気が出ない。それでも、順路だ。入間川大橋をわたり、橋の下へ回り込んだ。今日は、右岸の川シモ。流れに沿った、悪路を行く。しだいに、視界が悪くなる。両脇に、背の高い雑草が繁茂している。ゆっくり進む。

所々で止まり、対岸の景色などを眺める。あたりに人影はない。気まぐれに、護岸を斜めにおり、川の中をのぞく。なぜか、驚くほど水がきれいだ。小魚もいる。

この時期、キクイモの花ばかり目に付くが、ほかにもいろいろ咲いていた。ママコノシリヌグイ、ツユクサ、アカマンマ、ヘクソカズラ、それに、名前は失念したが、白い、星のような形をした花が、咲き乱れていた。みな、おなじみの顔ぶれだ。ほかにも、ブタクサやクズなどが、川原を埋め尽くす勢いだ。

流れに沿った悪路が、行き止まり。車を止め、外に出た。対岸に、生コンプラントや西武文理の建物が見える。以前、何とか写真にしようと頑張ったが、駄目だった。構図が弱い。あいにく、今日は、明かりの具合もよくない。空に色もない。カメラを向けることもしなかった。

さてと、引き上げだ。といっても、引き返すわけにはいかない。今度は、崖際の悪路。廃駅の脇をぬけ、八瀬大橋の下へ出る。途中、撮影ポイントが何箇所もある。だが、もう、写真を撮る元気はない。一気に走りぬけよう。





2006.9.12(火)雨。一日中降ったりやんだり。入間川歩行はお休み。

午後から眼科診察。早めに出て、途中、志木のGAPへ寄る。店の雰囲気はいい。ただし、セール品がすくない。わざわざ電車に乗って来ることもない。





2006.9.14(木)雨。午後にはやみそう。入間川歩行はお休み。

残暑も、あっという間に終わった。昨日などは、気温が、20度くらいしかない。涼しいを通り越して、寒い。急遽、押入れから、スウェットジャージーやタイツを取り出した。

天気予報を見ると、向こう一週間くらいは、晴れ間がない。夏から秋への、季節の変わり目だ。歩行も写真も、当分の間、おあずけ。とはいえ、この長雨が過ぎれば、スカッとした秋空が来る。いい写真を撮ろう。





2006.9.16(土)曇り、時々晴れ。入間川十二番、入間川大橋。右岸、左岸の川シモ。九時から十一時半。

寄り道。川越市場の裏手。畦に、彼岸花が咲いていた。道路際にも、コスモス。急に、秋が深まった。





照ったり、翳ったり。いや、むしろ、翳っている時間が多い。時々、思い出したように、陽が差す。なんだか、気合が入らない。それでも、増形の建材所を背中にして、右岸の低い土手を、川カミへ向かって流した。道が狭く、車のすれ違いができない。気持ちが落ち着かない。

途中、撮影ポイントで、何回か止まる。増形運動場、水門、対岸の西武文理の建物。さらには、牧場脇の鉄塔、奥富運動場。しかし、どれもこれも駄目だ。日差しがない。

引き上げるには、早すぎる。入間川大橋を渡り、橋際から、左岸の川原道へ入り込んだ。視界のないガタガタ道。すこしいくと、左手に、学校の施設、右手は川。さらに行くと、親水公園の南端。そこで行き止まり。ちょうど、狭山市と川越市の境界線。

車から降りる。なんとなく、様子がちがう。周辺が整地されている。自転車道脇の、産廃の丘も、低くなっている。その上に、車が何台も止まっているのを、何日かまえに、対岸から見ている。学校の関係者のようだ。そのうち、機会を見て、登ってみようと思った。

ちょっとした坂を上っていく。無人の検問所があり、ロープが渡してあった。横に、背の高い生垣があり、間から、学校の中庭が見える。地続きになっている。やはり、西武文理の土地だ。

整地された崖っぷちを、ぶらぶら歩き出した。見晴らしがいい。親水公園が一望できる。初めて目にする景色だが、いかんせん、遠目過ぎる。写真にはならない。とはいえ、記念だ。何枚か撮った。撮りながら、想った。ひょっとしたら、ここにも建物が立つのかもしれない。そうなれば、当然、立ち入り禁止。この景色も、最初で最後かもしれない。





2006.9.17(日)くもり。入間川歩行はお休み。

昨晩、久しぶりに、夜更かし。十一時頃まで、お笑い番組を見ていた。そのせいか、朝起きるのが辛かった。それでも、いったんは起きた。だが、やはり駄目。すぐに、二度寝。少し、風邪気味なのかもしれない。十時半頃起きだし、さえない頭でメール返信。そうこうしているうちに、約束の時間。十二時前に、外出。会食。二時半頃もどる。写真紀行を書こうとおもったが、全然やる気になれない。その後は、テレビなどを見て、夜まで、くつろぐ。





2006.9.19(火)晴れのち曇り。気分転換に、入間川七番、川越橋。九時から、同四十五分。

順路から言えば、今日は、安比奈給水橋の右岸。草深い廃駅の辺りだ。平日だから、建材屋のダンプが、ホコリっぽい道を、行ったり来たりしている。殺伐とした光景が、目に浮かぶ。なんだか、行きたくない。それじゃ、八瀬大橋の上でも歩こうか。いや〜、ガードレールのない、細い路側帯を歩くのが、こわい。欄干が低いから、車に引っかけられたら、ひとたまりもない。落ちたら、命はない。

八瀬大橋の、すぐそばまで来ているのに、回転。川越橋へ向かった。端際の土手に車を止め、対岸の景色をゆっくり眺めよう。気持ちが弱っている。あそこしかない。






2006.9.21(木)晴れのち曇り。日差しは強いが、さわやか。入間川十一番、給水橋。九時から十一時。

安比奈新道から、八瀬大橋を渡る。一つ目の手押し信号を右折。川越市場の裏手に回り込む。あとは、民家の間をうねうね走り、増形の稲田へ出る。西側の、西武文理の建物を背景にして、畦に咲く彼岸花を撮る。

巾着田の彼岸花が、見頃。およそ100万本、林の中に咲いている。今朝、NHKのニュースが流れた。とはいえ、気持ちは動かない。前に、二、三度行って、もう、懲りている。彼岸花は、たしかに見事だ。しかしながら、あまりにも人が多すぎる。どの撮影ポイントにも、アマチュアカメラマンが群がっている。落ち着いて撮れる状態じゃない。

稲田の畦に、何本かの、彼岸花。アキアカネが飛んでいて、コオロギの鳴き声が、かすかに聞こえる。自分は、ゆっくり、静かに撮りたい。





移動。今日こそは、廃駅を歩く。そのためには、低めの土手を越え、草深い川原道を行くしかない。腹をきめ、車止めをすり抜ける。轍はある。だが、雑草が、両脇から覆いかぶさっている。それを、掻き分けながら進む。ごつん、ごつんと、ブタクサの太い枝。車は大丈夫なのか。擦り傷が気になる。

少し行くと、道が二股。右へ行く。すぐに、視界が開ける。右手に、廃棄された重機があったはずだが、どこにもない。きれいに整地され、ロープが渡してある。誰が、撤去したのだろう。今度は、左カーブ。また草深くなる。しかも、大きな水溜りの悪路。ふと、サイドミラーに、でかいクモがいるのに気づく。黄色と黒の縞々。腹が親指の先ほどの大きさ。気味が悪い。とはいえ、窓を開け、払いのける勇気もない。しかたなく、そのまま走る。

悪路の終点。川沿いの道に突き当たる。車を止め、まずは、クモ退治。落ちている小枝を拾い、突っつく。ところが、ミラーにへばりついて、なかなか落ちない。クモも必死だ。とはいえ、これは俺の車だ。あっちへ行け、とばかりに払い落とす。一瞬、クモが消えた。不安になって、辺りを見回す。すぐそばの雑草にくっついている。ま、これで一件落着。

歩き出す。まてよ、何かちがう。傾いた架線柱が、あったはずだ。立ち止まる。一面、葛の原。荒地を覆いつくしている。なるほど、また一本、朽ち果てたというわけか。見回すと、ところどころに、黄色の大きな花が咲いていた。






2006.9.24(日)晴れ。スカッとした青空。入間川十一番、給水橋。左岸、親水公園。九時から十一時四十五分。

久しぶりの、親水公園。最高の秋晴れ。人がたくさんでている。北端側の駐車場に車を止め、ぶらぶら歩きだす。自転車道沿いの、林の中。彼岸花が咲いている。木漏れ日をうけ、赤が、きれいだ。吸い寄せられるようにして、足を踏み入れる。かなり粘る。だが、半信半疑。撮れたような気がしない。

露出補正を間違った。限界の、マイナス2。やはり、これじゃ、暗すぎた。というよりも、黒くつぶした部分が、中途半端な黒だ。漆黒にならない。デジカメで、撮れるような明かりじゃない。何度も、同じ間違いをしている。

気持ちを切り替え、今度は、お花畑。太陽を背にして撮った。マリーゴールド、コスモス、クレオメ、色とりどり。きれいで可愛い。ただし、いまいち、気合が入らない。花の写真は、いくら撮っても、上達しない。かなり以前から、諦めている。





お花畑を一回りして、護岸を歩きだした。横の、芝生広場では、中高年が、芝ゴルフをやっている。おばさんたちの嬌声が、耳障りだ。避けるようにして、すたすた歩いた。

途中、気まぐれに、護岸下の水溜りをのぞいてみた。意外にも、水が澄んでいる。底の、青い藻が揺れている。しゃがみこみ、目を凝らす。小魚の群れだ。たくさん居る。水面に、太陽が反射して、まぶしい。目に悪い。そう思いつつも、目が離せなかった。小さいくせに、実に俊敏。つまらないことに、感心していた。

車に戻った。移動。今度は、南端の駐車場へ車を止め、辺りを散策。崖が、一面、緑の葉っぱで覆われている。葛だとばかり思っていたが、ちがう。たしか、アレチノナス、とかいう名前だ。(正確には、アレチノウリ)中に、ポツリポツリと黄色いキクイモの花、さらに高いところには、彼岸花が一株、二株。どれ、撮らしてもらおうか。

カメラを向けると、遠目過ぎて、絵にならない。と、トンボが、画面を横切っていった。カメラから目を離し、青い空を見上げた。おいおい、けっこういるぞ。そう思ったとたん、スケベ心が出た。トンボを、写真の中に取り込もう。しかし、うまくいかない。露出とピントを合わせ、不動の姿勢で待っているのに、トンボは来ない。遠くのほうで、飛び回っている。それでも、ファインダーをのぞき続けた。崖の向こう、電線のかかった青空が、目に焼きついた。

トンボは撮れない。いや、何枚かは、画面に入ってきたが、いかんせん、小さすぎる。もう、諦めよう。また、ぶらぶら歩き出した。生コン工場のヘリを回り、整地された、産廃の丘に上がった。眺めがいい。見事な、秋晴れだ。何とか、写真に撮りたいものだが、やはり、駄目だ。目の前が開きすぎていて、絵にならない。立ち止まり、大きく息を吸った。

その後は、生コンプラントや、伐採をまぬがれた、大きな木などを見てまわった。干上がった地面に、小さな赤い花も咲いていた。マルバナコウソウ、たしか、そんな名前だった。






2006.9.26(火)曇りのち雨。入間川歩行はお休み。

一日中、所在無く過ごす。何もやる気がない。





2006.9.28(木)晴れ。暑い。入間川歩行、番外。小畔川、伊勢原公園付近。九時半から十一時。

体調も良くない。午後から用事もある。入間川へ出るのが億劫。ちょこっとだけ、裏の、小畔川へ行ってみよう。

旧霞ヶ関北小跡地の前。護岸際に、コンクリを打った、ちょっとした広場がある。車が入れるから、休日には、デイキャンプなどで、けっこう騒がしい。しかし、もとはといえば、小学生の野外授業のために、わざわざ、造ったものだ。皆して階段に座り、写生などをしていたのを、よく目にした。

北小が、伊勢原に移り、建物だけが残された。不埒な者どもに荒らされ、廃墟のようになっていた。それが、とうとう解体された。十日ほどで、跡形もなくなった。多少、かかわりのあった小学校だけに、解体作業を、複雑な気持ちで眺めた。写メールをしている若者などもいた。

写真は、あえて撮らなかった。重機で、崩されていく教室を正視できなかった。子供たちの、大切な思い出が消えていく。

向き直った。川の向こうは、秋の空だった。飛行機雲が、真一文字だ。






2006.9.30(土)曇り、一時晴れ。入間川十番、八瀬大橋。旧安比奈線。九時半から十一時半。

八瀬大橋を渡り、橋の下に回りこむ。車がいっぱい。サッカーグランドが、にぎやか。少年と若い親達だ。歩き出す。おっ、橋の下にホームレスがいる。青いビニールシートがつるされ、生活用具が取り散らかっている。横目でチラッと見て、通り過ぎる。目の端に、車の座席のようなものが映った。誰かいる。

前にも、この橋下に、ホームレスがいた。乱雑で、それこそ、ゴミだらけだった。それに比べれば、今度の奴は、多少、ちゃんとしている。と、いきなり、犬に吠え立てられた。茶色の、耳のたれた中型犬。首の周りに、緑色の布が巻きついている。ホームレスの飼い犬だ。一瞬、身がすくんで立ち止まった。犬が、足元にいる。しかし、噛み付いてくる様子でもないので、知らん顔して歩き出した。

犬は、少し距離をおきながら付いてくる。相変わらず、吠えている。右に曲がる。架線柱が見える。ヤツは、そこで止まった。自分は、さびた鉄路の上を歩きながら、写真を撮り出した。ところが、いつまでたっても、吠えている。カメラから目を離し、犬を見た。おびえているな。しゃがみこんで、おいでおいでをした。案の定、犬は、喜んでやってきた。ごろっとハラを向け、擦り寄ってきた。よしよし。体は大きいが、まだ子供だった。

その後は、吠えるのをやめ、従順になった。自分の周りを、駆けずり回っている。ところが、ある地点からは、付いてこない。なるほど、ワンコのテリトリーは、ここまでだ。見ると、向こうの木陰で、休んでいる。





誰がやったのか、鉄路の周りだけは、下草が刈られている。歩くには、都合がいい。う、一瞬、息が止まった。こんどは、ヘビだ。長々と、行く手をふさいでいる。じっと見た、マムシではない。しかし、それにしても、デカイ。頭を、目で探したが、下草の中にかれていて見えない。しょうがない。周りを見回した。適当な長さの、木の枝を拾い、へっぴり腰で、突っついた。ヘビは、鎌首を持ち上げた。小さな黒い目が見えた。相手も、怖がっている。向きを変え、さぁっと、草むらの中へ消えていった。





最近になって、鉄路の横に、小さなモトクロス場ができた。少し開けた感じになっている。今日も、完全装備のミニバイクが、何台か、走り回っている。事務所とおぼしきプレハブに、NPO法人、二輪塾、とあった。

ホコリっぽい道路を渡った。建材屋のダンプ道だ。さびた鉄路は、なおも続く。だが、もう、歩けない。草むらになっている。その脇に、緑のフェンスに囲まれた空間がある。中に、犬小屋などがいくつもある。

以前は、そこに、野犬とおぼしき犬どもが、何十匹もいた。誰が、どういうつもりで囲っているのか、皆目見当もつかない。近づくと、いっせいに吠え立てる。恐ろしくて、そばまで行くことができなかった。それにしても、理不尽な話だ。

野犬はいない。静かだ。ゆっくりと、架線柱を撮った。ふと横を見ると、黒いネコがいる。あいつは、先日も見た。向こう側にある、廃駅のあたりだ。鉄路沿いの小道を、目で追った。黒猫が、ゆっくり去っていく。






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