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 Photo essay<入間川写真紀行>

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2013

2006.12.1(金)晴れ。無風。比較的あたたかい。入間川八番、初雁橋。九時半から十二時。

初雁橋を渡る。信号を左折、小ヶ谷の東上線ガード脇に、車を止める。レンガ橋脚の遺構がある。気にはなるのだが、ロケーションが悪い。交通量の多い道路端にある。目の前を、自動車がひっきりなしに通る。あぶなくてしょうがない。少し撮って、すぐに引き上げ。

土手を上る。すぐ脇に、東上線鉄橋がある。土手を下り、鉄橋をくぐり、また土手に上がる。初雁橋のほうへ、ぶらぶら歩く。東屋のベンチに、ホームレスが寝ている。ま、そんなことは、どうでもよろしい。まっさおな水面に、鉄橋がくっきり映っている。無風。ここぞとばかり、シャッターを切る。ところが、どうもよくない。構図が悪い。画面が斜めだ。

あれやこれやと、悪戦苦闘。しかし、そのうち、何がなんだかわからなくなってしまった。頭で撮っている。切り替えよう。チラッと後を振り向いた。ベンチのホームレスは、熟睡している。さっきから、ずうっと同じ体勢。

広めの土手を、ぶらぶら歩き出した。今度は、なじみの水深計だ。でも、鉄橋にひっかかり、時間帯がおそくなった。それ見ろ!案の定、ほぼ斜光。そのうえ、脇に自転車がとまっている。それでも今日は、粘りに粘った。再三再四のモニタリング。万全を期した。撮れているはずだ。






2006.12.2(土)晴れ。あたたかい。入間川七番、川越橋。九時半から十一時半。

左岸、川越線ガード付近の土手から上がり、川原へと下りる。そのまま少し行って、東上線鉄橋の前に車を止める。寝不足で、体調不良。動悸がする。休み休み、付近を歩く。気合が入らない。早めに引き上げ。ゆっくり昼寝でもしよう。






2006.12.3(日)晴れ。風が冷たい。入間川八番、初雁橋。九時半から十一時。

初雁橋を渡る。信号を左折。川越線のガードをくぐり、すぐに右折。線路沿い車を止める。農道やあぜ道を歩きながら、東上線などを撮る。

視界の、左方向に、外秩父の山並み。おっぱい山が、小さく見える。ときおり、目の前を、電車が通り抜けていく。場所は、今成付近。刈り取りの終わった農地が、寒々しい。






2006.12.4(月)晴れ。寒い。入間川七番、川越橋。九時から十一時半。

白百合幼稚園の前を通り過ぎ、川越橋を渡る。カミの中洲に、黒い鳥がうじゃうじゃいる。カラスかな?いや、カワウだ。

橋際の土手に車を止める。いつ飛び立つかわからない。急いで外に出る。そうっと、土手の上から眺める。百羽以上はいる。どういうつもりなのか、中州でのんびり休憩している。

絶対モノにする。気合を入れ、撮り出した。三十分ほど粘った。念のため、さらに撮っていると、ウォーキングの中高年から、次々に声を掛けられた。何という鳥ですか?異様な感じに、みな驚いている。こんなのは、はじめてだ。

体が冷えた。いったん車に戻った。モニターをのぞき、缶コーヒーを一口飲んだ。その瞬間、目の端に黒いものが映った。と、空が一面黒い。カワウが、隊列を組んで、川カミのほうへ飛んでいく。

フロントガラス越しに、目で追った。東上線鉄橋の上を楽々と飛び越え、川越公園の茂みへと消えていった。カワウどもは、俺に撮ってもらいたかったのかもしれない。ふと想った。





一息入れ、また外に出た。中州は、もぬけの空。いや、はじっこに、一羽いる。じっと見る。なんだか弱弱しい。飛べないのかもしれない。置いてきぼりか。なんだか、かわいそうになる。

自然界は、厳しい。弱った仲間を助ける、などということは、金輪際しない。そんなことをしていたら、自分がやられてしまう。個よりは、類が優先する。命をつないでいくことが、大切なわけだ。

立ち止まった。土手下の自転車道を、シルバーの自転車が走っていく。荷台に、山のような荷物。あきらかにホームレスだ。そういえば、あの自転車には、見覚えがある。数日前、東屋の脇に止まっていた。

走り去る姿を、さらに、目で追った。荷台に、大きなペットボトルが二本、見える。几帳面な荷ごしらえだ。帽子をかぶっていたから、顔は見えなかった。だが、察すに、六十台のなかば、白髪まじりのオヤジだ。新しいねぐらへ向かっているのだろう。元気よく、ペダルをこいでいる。みじめな感じは、全然しない。

向き直った。東上線鉄橋の上に人がいる。点検作業をしている。ここまで来たのなら、もう一度挑戦しよう。青い水面に映る鉄橋。この前は、なぜ撮り損ねたのか?護岸に座り込んだ。川が、驚くほど澄んでいる。底の波消しブロックが、透けて見える。大きく息を吸った。カメラを構え、撮り出した。






2006.12.6(水)曇り時々晴れ。入間川八番、初雁橋。保健センター裏。

川越橋を渡り、保健センターの裏手へ行く。日差しが弱い。ちょっと迷ったが、歩行は中止。

少し走り、土手に上がる。川越橋付近の中洲。カワウが三羽、そのうち、コサギが十羽ほどやってきた。車の中から、少し眺める。依然として、日差しが弱い。撮ってもしょうがない。

移動。右岸の土手を、雁見橋まで流す。橋脚の工事をやっている。左岸の土手は通行禁止。橋をわたり、鶴ヶ島のベイシアへ行く。かんちがい。理容室があったのは、日高のベイシアだった。移動。407号を入間方面へ走る。

のぞくと、客が一人いる。店に入った。従業員のおばさんに促され、千円分のプリカードを買う。椅子に座り、刈り方の注文をつける。なんとなく要領を得ない。横で仕事をしている女性が、話を聞いてくれる。ほかに、中高年のおじさんもいるが、なんだか頼りない。アルバイトようだ。

少しまって、女性にやってもらう。手際がいい。帰り際に、名前を聞いた。Nさん。忘れそうなので、何回か頭の中で繰り返した。

ベイシアの理容室は、前から知っていた。千円で、安い。ただし、なんとなく不安。今日は、ためしに、という気持ちで入った。

これまでは、近くの床屋へ行っていた。腕はいいが、愛想のない若いオーナー。二千円だから、普通の床屋よりは安い。しょうがない。我慢していた。

カットだけで、シャンプーはない。むしろ、そのほうがいい。店を出た。まぁ、まぁ、こちらの思い通りにやってくれた。頭が寒い。安くて早い。それに、嫌な感じもしなかった。鞍替えすることに決めた。





2006.12.10(日)晴れ。体調不良。ほぼ一日中寝ている。





2006.12.11(月)晴れ。入間川七番、川越橋。十時から十時半。

体調が、少しよくなった。いそいそと歩行の準備を整え、外出。川越橋を渡り、保健センターの横を通り過ぎる。少し行って、細い農道を左折。

寒々とした農地の真ん中に、鉄塔が二本たっている。外に出た。おもった以上に、風が冷たい。とたんに、やる気がなくなった。まだ本調子ではない。寒風のなか、鉄塔と向き合う元気はない。無理は禁物。引き上げよう。

いま来た道を戻った。西側の空が青い。外秩父の山並みも見える。おもわず、車を止めた。ダウンジャケットを着込んで、外に出た。何枚か撮った。だが、集中できない。頭がぼうっとする。とうてい、写真の撮れる状態ではない。

絶好の写真日和を、連続して、二日も無駄にした。獲物を取り逃がした。一瞬、そんな気がした。






2006.12.13(水)晴れ。午後からは曇り、小雨。入間川七番、川越橋。九時半から十一時半。

川越橋を渡る。風邪は、だいぶよくなった。だが、念のため、かなり着込んでいる。軽登山靴も穿いた。右岸、橋際の土手に車を止める。

土手を下り、橋の下へ行く。水際から、川シモを眺める。鉄塔が何本も見える。でも、この位置からじゃ駄目だ。絵にならない。

左岸へ移動。土手の上。眼下に、上戸運動公園。少し前から、河川敷の駐車場には、チェーンがかかっている。もっとも、車止めの鉄柱を土手際にかわし、回り込むという手もある。まぁ、いい。車から降り、ぶらぶら歩き出した。

グランド脇の駐車場を横切り、橋の下へ行った。水が少ない。護岸を斜めに下りた。干上がった川床。足元がやわらかい。いつもなら、流れが急なところだ。何十回も来ているが、この位置から、川シモを眺めたことはない。おもむろに、カメラの電源を入れた。






2006.12.15(金)晴れ。風もなく、比較的あたたかい。入間川七番、川越橋。右岸、上寺山付近。十時から十二時。

右岸、川越橋から雁見橋までの土手。東屋などがあり、自転車道の休憩ポイントになっている。土手下の農地から、鉄塔群とからめて撮るのが、決まりごと。それから、ポンプ小屋。この一角には、四、五軒ある。みな現役らしく、きれいに手入れされている。





農閑期とはいえ、農地には、めったに足を踏み入れない。靴が泥だらけになるからだ。ま、それに、人の目が気になる。所有者が見ているかもしれない。人の田んぼに、勝手に入っている。自分なら、そうおもう。だから、なるべく、あぜ道を歩いて、写真を撮ることにしている。

ところが、今日は、ちょっと大胆になった。足元がしっかりしている。軽登山靴を履いている。基本は、あぜ道からだが、位置取りの関係上、多少は、農地へ踏み込んだ。

トラクターで、きれいに田起こしされている。土足で踏み込むようで、なんとなく気が引ける。掘り返された土の上に乗った。おもったより、かたい。靴がめり込むようなことはなかった。






2006.12.16(土)晴れのち曇り。入間川七番、川越橋。浅間堰付近。十時から十二時半。

はじめは左岸から、次に、右岸からも堰へ近づく。

右岸側。堰の脇に浅瀬がある。見ると、驚くほど透き通っている。足音に驚き、小魚の群れが、右往左往している。これほどの大群を目にしたことはない。

あきらかに、水質は改善されている。川に魚が戻ってきた。とはいえ、河川敷の整備が進み、雑草の繁茂していた場所が、運動公園へと変貌している。昆虫や小鳥は、激減している。

堰を挟んで、左岸側は整備が進んでいる。いっぽう、右岸側には、まだ自然が残っている。そこに、十数本、雑木がある。いまは、葉が落ちて坊主だが、小鳥の住処になっている。

百舌、かな?茶色の、雀より一回り大きい小鳥が、飛び交っている。一羽が、立ち枯れた雑草に止まって鳴いている。可愛い。いろいろな声を出せるから、百舌と命名された。何かで読んだような気がする。






2006.12.18(月)冬晴れ。入間川六番、雁見橋。右岸、橋際、釈迦堂付近。九時半から十一時半。

川越橋を渡って、すぐに左折。右岸の土手道に入る。東屋の前、路側帯に車を止める。風が冷たい。ダウンのフードをすっぽりかぶった。

快晴。富士山がはっきり見える。とはいえ、逆光。西側の山並みも、手に取るように見える。しかし、こちらは、対岸の景色がさえない。両方とも、写真にならない。ぶらぶら、川シモへ向かって歩き出した。

雁見橋が工事中。立ち止まり、眺める。どうやら、橋脚の補修工事らしい。向き直った。真っ青な冬空に、枯れ枝が、きれいな弧を描いている。銀杏の葉を広げたような形。あの下には、石仏が、何体かある。気色悪いところだが、行ってみよう。

石仏が二体。かけた板碑の横に、大きな碑。これは、さほど古いものじゃない。その後に、大きさの違うお墓が四基。あとは、屋根つきの小さな荒神様。物置のような建物もある。

本来は、川原にあったものが、河川工事で、強制撤去の憂き目にあった。しかし、廃棄することはできない。石ではあるが、神仏だ。人間の想いがこもっている。

安置する場所に窮したのだろう、橋際の、穴倉のようなところに集められた。そこには、伐採をまぬがれた、大きなケヤキが立っていた。さらに、長い年月がたった。石仏達は、ややくたびれてきたが、ケヤキは大木になった。神仏の笠に、神が宿るようになった。






2006.12.23(土)晴れ。入間川六番、雁見橋。十時ら十二時。

雁見橋を渡り、右岸の土手に入る。少し行って、路肩に車を止める。

工事中の橋に近づく。看板がある。橋脚の耐震補強工事、とある。まさか、橋脚の鉄筋を少なくしたわけでもあるまい。しかし、それならば、なぜ、「耐震」とわざわざ銘記するのか。耐震偽装問題の波紋が、こんなところにも及んでいる。ちなみに、請負工事金額は、約六千万円。高いのか安いのか、素人には、にわかに判断しかねる。

護岸の上から、川の中をのぞいた。底に、かなり大きな木が、横たわっている。根っこがついたままだ。目算すると、幹の長さは十メール以上もある。その下に、鯉が群れていた。四、五十はいる。

川の鯉など、どれもこれもおなじだろう。そうおもっていたが、じっと見ていると、やはり、個体差というものがある。みな、黒っぽいが、濃淡がある。大きさもまちまち。丸々と太っているやつもいる。

さらに見ていると、水中で、しろっぽいものが、ひらひらしている。ゴミかな。いや、鯉だ。尾びれや胸びれが白い。変なやつだな。だが、すぐにぴんと来た。病気だ。口のあたりも白い。しかし、病気のわりには、動きがすばやい。仲間はずれにされているというわけでもない。鯉ヘルペスだとしたら、周りの鯉たちにも感染するはずだ。それなのに、白いのは、あいつだけ。群れは、驚くほど俊敏で、精気に満ちていた。

大きな木が、根っこをつけたまま、水中に横たわっている。無残な光景だ。しかし、そこは、鯉たちの隠れ家となっていた。かってな想いで、目が曇っている。いつものことだ。






2006.12.24(日)冬晴れ。入間川六番、雁見橋。右岸、浅間堰付近。十時から十二時。

土手の上から、堰を俯瞰する。幾度となく撮っている景色だ。立ち位置も、ほぼきまっている。階段の少し右側。構図に関して言えば、対岸の工場の屋根を、水平に保つ。なおかつ、鉄塔の垂直、画面の水平に気をつける。

撮りながら、想った。この景色の、どこに魅かれているのか。川の青さ。だから、冬場にしか撮らない。それにしては、押さえている場所が、弱い。最初に目に入るのは、鉄塔だ。う〜ん、しかし、これ以外の構図が思い浮かばない。





撮りながら、少しずつ土手をおりていった。あらたな景色は、発見できない。すぐに、護岸に達した。首を伸ばし、堰を覗き込んだ。水しぶきがあがっている。なんとなく、寒々しい。

気を取り直し、護岸沿いに歩きだした。少し川シモに、雑木が一本たっている。視界の右端には電波塔。青い空には、横一文字の太い雲。みっつとも画面に入れた。駄目だ。雑木も電波塔もかしいでいる。位置取りが悪い。カメラから目を離した。ため息をつきながら、空を見上げた。






2006.12.26(月)晴れ。入間川六番、雁見橋。上寺山、八咫神社付近。十時から十一時半。

日差しが弱い。予報どおりだ。なんとなく気分が乗らない。でもしょうがない。今日は、土手下の道から、撮り損ねた電波塔を撮る。

雁見橋を渡り、上寺山の信号を左折。民家の間をくねくね行く。大きな白い蔵なども見える。左手には土手。そのうち、神社の前に出た。脇に道があり、正面に電波塔が突っ立っている。

平日の午前中、それなのに、神社の中から人の声が聞こえる。かまうことはない。車の中から乗り出し、大きな黒御影の碑文を読んだ。村社の由来が書いてある。一番気になったのは、その名前。「八咫神社」。読めない。はじめてみる字だ。

やぐち、と読んだのか、あるいは、やくち、と読むのか、碑文には、ちゃんと書いてあったはずだ。だが、どうしても思い出せない。漢和辞典を引いた。音で「シ」と読む。意味は、これまた、難しい。尺度の名、周の尺で、八寸、営造尺の6.4寸。短いこと、近いこと、少し。なんのことか、ますますわからない。

その間にも、神社には、頻繁に人の出入りがある。みな、手に小さな包みをもっている。本殿に一礼し、中にいる世話役と挨拶をかわしている。はは〜ん、お札やお守りを納めに来たんだな。氏神様へ、今年一年の安息を感謝する。年末の、風物詩と言ってもいい。

あと一週間で、年が明ける。めでたい、という気持ちにはなれないが、なんとなくそわそわしている。

外に出た。電波塔が、ひょろひょろっと、空へ向かっていた。あの先から、電波が出ている。目には見えないが、言葉のやり取りがおこなわれている。不思議な気がした。






2006.12.27(水)晴れ。強風。さほど寒くない。入間川六番、雁見橋。左岸、土手下の道。十時から十二時半。

昨晩は、冬の嵐。案の定、川が増水している。左岸の土手から、雁見運動公園へおりる。土手下の道に車を止める。目の前には、車止めのコンクリブロック。三つ、きれいに並んでいる。

護岸の雑木などを撮りながら、平塚橋まで歩く。真っ青な空。浮雲が次々に通り過ぎていく。形が面白い。こんな光景は、一年に何回もない。絶好の写真日和。ただし、風が猛烈に強い。土手の上などでは、ちゃんと立っていられない。吹き飛ばされそうだ。





いったん車に戻った。引き上げる気にはなれない。川カミへ、車を移動。途中、堰をのぞく。濁流。ものすごい。先日眺めた堰とは、別物。しばし、見入ってしまった。

朝から、どうも胸の辺りが重ったるい。無理はしたくない。とはいえ、もうすこし歩いてみよう。なにせ、季節外れの大雨。まるで、台風一過の晴天。めったにあることじゃない。






2006.12.28(木)晴れ。風もなく暖かい。入間川六番、雁見橋。鯨井地区。十時から十二時。

雁見橋際を、左に折れる。少し行って、広い農道に車を止める。西側に鉄塔。右は赤白の横縞、左は、少し小さめの鉛色。ファインダーをのぞく。遠すぎる。移動。農道を走り回り、ロケーションを探す。

駄目だ、どうしても、左の鉄塔が傾いてしまう。そればかりじゃない。画面の水平が取れない。そういえば、去年も難儀した。けっきょくはモノにならなかった。

諦めた。となると、めぼしいものは、ポンプ小屋くらいしかない。ぐるっと、だだっ広い農地を見回した。どれもこれも、さほど魅力的じゃない。まぁ、いい。見てまわることにした。

一軒撮り終え、移動。昨晩の雨だ。一反、きれいに水が張っている。通り過ぎてから想った。撮るのをあきらめた、赤白の鉄塔が映っているかもしれない。急遽、一般道に車を止めた。あぜ道をめぐりながら、近づいていった。






2006.12.29(金)晴れ。風が冷たい。入間川六番、雁見橋。鯨井、新清掃センター予定地。十時から十二時十五分。

小畔川の右岸、鯨井地区に、だだっ広い更地がある。新清掃センターの予定地だそうな。去年も来たが、さほど変わっていない。いや、真新しいコンクリブロックが、敷地に置かれている。おびただしい数だ。黄色のクレーン車が、その中で作業をしている。

柵にそって歩きだした。土盛りしてあるから、背伸びしても、中は見えない。ただし、敷地のど真ん中を、鉄塔が横切っている。仰ぎ見る。雲ひとつない晴天。

少しずつ移動しながら、撮り始めた。寒いだろうとおもって、かなり着込んできた。ダウンのフードも、すっぽりかぶっている。北西の強風。秩父颪も、さしてこわくない。ところが、しだいに、指先が冷えてきた。痛いくらいだ。

ホカロンを取りに、車に戻ろうか。指先に息を吹きかけた。指先が凍え、シャッターが押せないのは、これで二度目。今シーズンは、暖冬なのか。昨年にくらべ、寒さ対策を徹底しているから、そう感じるのかもしれない。

指先に感覚が戻ってきた。突如、頭の上で、人の声が聞こえる。空耳だろう。音の方向を、見上げた。高圧線。ひゅうひゅう、うなっている。






2006.12.30(土)晴れ。入間川歩行、番外。越辺川、右岸、小沼付近。十時から十二時。

今日の順路。入間川五番、平塚橋。右岸の土手を、車で流す。撮影ポイントを、思い出そうとした。あるとすれば、西側の景色だ。いや〜、寒風に吹かれながら、撮るほどのものじゃない。遠目すぎる。とたんに、やる気がなくなった。

何日かまえの、NHKの朝のニュース。川島町に、今年も、白鳥が飛来。気にはなったが、あわてて、撮りに行くことはしなかった。

白鳥、か。様子を見に行こう。右岸の土手を突っ走り、平塚橋を渡る。あとは、いつものルート。川越霊園の脇を通り抜け、農道を一直線。右手に、越辺川の土手が見えてきた。

工事中の橋脚が、農地を横切っている。まだ、橋梁工事は始まっていない。清掃工場の白い煙突も見える。カントリーエレベーターの赤い屋根も健在。一見したところ、昨年と同じ光景。変わりようのない景色に、気持ちがなごんだ。この一帯も、俺のテリトリーだ。






2006.12.31(日)晴れ。入間川五番、平塚橋。右岸、福田付近。十時から十二時。

寄り道。雁見橋際から、左岸の土手に入る。ゆっくり流しながら、西側の景色を見る。やはり、遠目すぎる。移動。平塚橋を渡り、今度は、右岸の土手を流す。

対岸に鉄塔。背景には、外秩父の山並。とはいえ、遠すぎる。しかも、斜光。思い切って、ズーム200ミリで、ファインダーをのぞいた。土手と鉄塔が、垂直じゃない。立ち位置を少しずつ変えながら、ベストポイントを探る。駄目だ。顔を上げた。土手に止めた車が、小さく見えた。

今来た道を戻った。ポケットの中には、ホカロンがある。昨日使ったものだが、今日になっても使える。得をした気分だ。と、見覚えのある御地蔵さんが目に入った。真っ赤な毛糸の帽子と肩掛け。そうだ、すっかり忘れていた。大切な撮影ポイントだ。





撮り終わった後に、すぐ近くまで行き、手を合わせた。気持ちが静まった。少しして、顔を上げた。屋根の裏に、なにか張ってある。仰ぎ見た。小さな木の札。福田村入口地蔵、とあった。





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