此岸からの風景
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 Photo essay<入間川写真紀行>

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2013

2007.2.1(木)晴れ一時曇り。入間川歩行、番外、小畔川。大谷川新水門、および、川越墓苑裏手。九時半から十一時半。

寄り道。入間川左岸、平塚付近で、西側の景色を撮る。

つぎは、鎌取橋。もう一度、あたりを歩く。移動。土手を下り、福祉施設の横を抜け、新水門の前に出る。何枚か撮るが、何か足らない。

さらに、大谷川沿いに行く。施設の裏手に車を止め、歩き出す。まずは、V字護岸の大谷川。底が見える。おもったよりきれい。とはいえ、生き物の姿はない。

対岸が、どうっとひらけている。開けすぎて、写真にならない。ポイントは、ふたつ。ひとつ目は、二棟の飼料倉庫。よくよく見ると、これは、画面の水平が取れない。あっさり諦める。もうひとつは、大きな三本の雑木。うち、二本が、剪定の憂き目にあっていた。





2007.2.2(金)晴れ。風が冷たい。入間川歩行、番外、越辺川。大谷川水門から道場橋。右岸を遡上。十時から十二時。

寄り道。平塚の土手から、西側の景色を、また撮る。風が冷たい。久しぶりに、ダウンジャケットを着る。

移動。落合橋に出て、越辺川右岸に入る。西側の山並みがいい。手前に、赤白の鉄塔群。何枚か撮るが、遠すぎる。

土手を少し移動。水門脇に車を止める。護岸工事には目もくれない。見飽きたのだろう。水門の、真新しいコンクリに目がいく。真横から撮る。

移動。土手下の川原へ下りる。釣り場になっている。車から下り、水際をぶらぶら歩く。国土省の、河川パトロールカーが来る。鮮やかなオレンジ色のツートン。新車のようだ。やり過ごし、少したって、後ろを振り返る。デコボコの川原道を行き、耕作地の脇を抜けていった。なるほど、通り抜けられるわけだ。

車に戻り、パトロールカーの通ったあとを、ゆっくり走る。はじめての景色。竹藪や雑木林が多い。ただし、ゴミだらけ。荒れている。すぐに、土手にぶつかる。土手下の道を、さらに行く。前方に道場橋。橋の下に回りこみ、車を止める。

浮雲が、ぽかり。北側の空が、真っ青。今日はここまで。





2007.2.3(土)晴れ。入間川歩行、番外、越辺川。落合橋から道場橋。左岸を遡上。および、紺屋付近の農地。九時半から十二時。

雁見橋西詰から土手に入り、一気に落合橋まで走る。橋を渡り、越辺川左岸に入る。土手をゆっくり流す。途中で、土手下の道に下りる。水際は、釣り場。のぞきにいく。たいしたことはない。写真を撮るまでもない。

また、土手に上がる。道場橋の手前、川が大きく蛇行している。青くてきれい。何枚か撮るが、絵にならない。橋の下の河川敷運動場では、少年野球。行くのが億劫になる。

道場橋を渡る。少し行って、広い農道を左折。引き上げるには、早すぎる。それに、まともな写真が一枚もない。脇に入る。だだっ広い農地の真ん中。電柱が並んでいる。突き当たりは土手。

撮りながら想った。どうもよくない。心が動かない。構図をなぞっているだけだ。案の定、写真は、全滅。それに、頭がぼうっとする。写真紀行も書く気になれない。風邪を引いたのかもしれない。





2007.2.4(日)晴れ。風が冷たい。入間川歩行、番外、越辺川。右岸、横沼付近。九時から十二時。

回り道。大谷川の水門を見て、道場橋際から、川原へ入る。竹薮と雑木。所々に、河川敷耕作地もある。麦を植えたと見え、畑が青い。車で、行けるところまで行く。

グリーンシートの掘っ立て小屋が、視界の左端にある。竹薮の中だ。あんなところにも居る。越辺川のホームレスだ。姿は見えない。気にしない、気にしない。外に出る。枯野へ踏み込み、水際まで行く。これといった景色はない。すぐに戻る。

移動。土手を越える。だだっ広い農地。鉄塔に建設中の橋脚。どうしても、鉄塔の垂直が取れない。何回も撮り損ねている景色だ。農道に車を止める。慎重に撮り出す。





2007.2.5(月)晴れ。暖かい。歩行、番外入間川、越辺川。右岸流域、小沼付近。九時半から十二時。

土手下の道。渇水した用水路の脇に、石仏があった。なぜ、こんな処に、とはおもわない。河川改修か築堤工事かで、強制移動の憂き目にあった。本来は、もっと水際にあったものだろう。

その昔、おっぺがわ(越辺川)は、あばれ川で、手に負えなかった。度重なる洪水で、命を落とした人も数知れない。そのたびに、川原に、供養の石碑が建てられた。

近年の改修工事の際、地元の篤信家の尽力で、一体だけが、かろうじて、残された。おそらくは、そうにちがいない。

農地を横断するコンクリの橋脚。これは、圏央道。いまは、川原の橋梁下部工事をやっている。川に、高速道路を架けるわけだから、素人が見ても、これが一番手間がかかる。だから、その前に、農地のほうを先に終わらせた。それにしても、去年の今頃には、いまの形が出来上がっていた。打ち捨てられた感じになっていたが、今年中には、橋梁が架かるだろう。そうなれば、このあたりの景色も一変する。見納めだ。





2007.2.8(木)晴れ。春の陽気。暖かい。入間川歩行、番外、越辺川。右岸、八幡橋付近。十時から十二時。

左目不調。仕方ない、という感じで車を走らせる。川越墓園の脇を通り抜け、農道を一直線。県道を横切り、脇に入る。突き当たりは、土手の下の道。きのう撮った石仏の前で、車から下りる。もう一度、ロケーションを確認する。駄目だ、集中できない。

移動。八幡橋へ行く。カミシモ、水際の悪路を、いけるところまで行く。ともに、すぐに行き止まり。釣り場になっている。すぐに戻る。対岸へ渡り、橋を撮りたいところだが、護岸に、オヤジが何人もいる。知り合いらしく、何か話し込んでいる。行くのが億劫になる。

左目が気になる。写真が撮れないほどではない。だが、気分が低調。やる気が出ない。引き上げよう。





2007.2.9(金)晴れ。空の色が、ヘン。遠くがかすんでいる。入間川歩行、番外、越辺川。左岸、道場橋から八幡橋。九時半から十二時。

道場橋を渡り、左岸の土手に入る。河川敷耕作地が青い。畑に麦が植えられている。正面には、赤白の鉄塔。建設中の高速道路が、民家の屋根越しに見える。車をハジへ寄せ、慎重に撮り出す。撮り損ねは、許されない。

移動。八幡橋際の護岸へ行く。今日は、誰もいない。ゆっくりと、木橋を眺める。川面に、白い煙突が映っている。写真に取り込みたいところだが、ちと遠すぎる。

橋を、ぶらぶら渡りだす。真ん中で立ち止まる。橋に平行して、支え木が、何本かある。じっと見る。いまある橋のじゃない。増水時、橋だけが流され、支え木は残った。おそらくは、新しい橋を架ける際、撤去されずに放置されたのだろう。

いや、ほかに、ちゃんとした理由があるのかもしれない。たとえば、大きな流木をブロックする。激しい水流を緩和する。そのために、わざと残した。たんなる手抜きとは思えない。いいや、撮った写真を見る限り、斜めの支え木は、水中の土台を補強しているようにも見える。冠水橋とは、かような構造なのかもしれない。





2007.2.11(日)晴れ。風が冷たい。入間川歩行、番外、越辺川。左岸、上井草付近。九時半から十一時半。

道場橋際から、土手に入る。左岸を遡上。少し行って、河川敷耕作地へ下りる。畑の周りを歩きながら撮る。

天気もいいし、ロケーションも最高。それなのに、心が動かない。どこか、うわの空。ナイキの、防寒ウォームアップが半額!ただし、白。まだあるかな?雑念。駄目だ、引き上げよう。





2007.2.12(月)晴れ。暖かい。入間川歩行、番外、越辺川。左岸、上井草付近。九時半から十二時。

道場橋際から、土手に入る。今日もまた、河川敷耕作地に下りる。土手下の道から、鉄塔を撮る。

移動。八幡橋へ行く。斜めの支え木のことが、気になっている。確かめる。全部で八本ある。そのうち、半数は崩れている。気まぐれに、形のあるものを、手や足でゆすってみた。みな、ぐらぐらしている。これは、どう考えても、補強材ではない。放置された。そう考えるのが妥当だ。

移動。広い土手道を遡上。人や車が多い。休日の、白鳥見物だ。横目で眺めながら通り過ぎる。そのまま、天神橋まで流す。橋を渡り、今度は、右岸の土手を、戻る形で走る。

飯盛川の新水門の辺り。水際に、三脚が何本か、たっている。白鳥をねらっている。ひやかしに、おりていった。そうっと、後ろから近づき、装備などを見た。ジッツオの三脚、高価な望遠レンズ。アマチュアのおじさんたちだ。白鳥の写真展があるようで、それに出品するのかもしれない。

写真を撮り始めたころ、近所の写真クラブに顔を出した。場違いな感じで、とけこめなかった。年齢的な違いもあったが、それだけじゃない。趣味が、ちがいすぎた。

鳥は、写真の被写体の中でも、特殊なものだ。というのも、普通のカメラじゃ撮れない。まずは、高価な機材が必要。それに、高度なテクニック。三つ目は、ねばりと根性。もっとも、「ねばりと根性」は、何をやっても必要なことだ。

鳥は撮れない。諦めている。機材、テクニック、根性。なにひとつ、もちあわせていない。だから、人の撮った写真を眺めているだけ。そのうち、気が向いたら、役場の写真展でも見に行こう。白鳥を、どう撮るのか?白鳥の、何を撮るのか?少しだけ、気になる。





2007.2.13(火)晴れ。暖かい。入間川歩行、番外、越辺川。小沼から天神橋。右岸を遡上。あとは、飯盛川水門付近。九時半から十二時時半。

小沼の石仏脇から、土手に上がる。水門横に車を止め、清掃センターを撮る。ベストポジションが、なかなか見つからない。

去年は、土手下の波消しブロックを手前に入れて撮った。写真紀行にアップした覚えがある。しかし、今回は、どうにもよくない。白い煙突と鉄塔の垂直が取れない。戻ったら、確認してみよう。

移動。土手下の道におりた。これといった景色はない。途中に、ラジコンポートがあるだけ。看板があり、有料と書いてある。それに、休日と木曜日以外は、閉鎖。首をかしげながら、通り過ぎる。天神橋の手前で、また土手に上がる。

同じ道を戻ってもしょうがない。流域の農地へおりる。民家がまばら。うねうね走り、清掃センターに沿っていくと、飯盛川に出る。橋際に車を止め、あたりを歩く。

ヘンな色の水深計は、健在。対岸の産廃の山も、あいかわらず。新水門の辺りでは、カワウが二羽、日向ぼっこ。そおっと近づいていく。

川には、柵があり、カワウは、川の真ん中ヘンにいる。とはいえ、かなりの至近距離。人間をなめているのか、なかなか逃げない。同じ辺りにいたカラスは、とっくに、飛び去っている。対岸の荒地の真ん中、堆肥場のフェンスに止まって、さかんに鳴いている。うるさいやつだ。

水門が、青い川面に映っている。かなり粘ったが、構図が作れない。そおっと、戻った。その間、カラスは、鳴きっぱなし。耳をすませた。怯えているようでもあり、憤慨しているようでもある。それにしても、これほど長く、鳴き続けているのは、めずらしい。

自然界で、黒は、獣色として警戒されている。だから、アウトドアに、黒っぽい衣服は禁忌。蜂などが、熊と間違え、襲ってくる可能性がある。そんなことには、お構いなしに、いつも、全身黒づくめで歩いている。いわば、カラスのようなものだ。それが、今日に限って、白の上下を着ている。なんだか、白鳥にでもなったような気分だ。裏切り者!それで、カラスが腹を立てているのかもしれない。





2007.2.15(木)晴れ。強い西風。凍えるほどではない。入間川歩行、番外、越辺川支流飯盛川。荻野2号橋付近。十時から十二時。

まっすぐ、越辺川の右岸土手へ行く。飯盛川との合流点、新水門の横。気になっているのは、清掃センターの煙突と鉄塔。

去年は、土手の中腹辺りから撮っている。構図を思い浮かべる。画面が、多少斜めだが、煙突と鉄塔の垂直は保たれている。我慢できる範囲だ。

位置取りを探した。ところが、どうしても見つからない。今一度、目を細め、煙突と鉄塔を眺めた。やはり、物理的に無理だろう。このあたりから、垂直は取れない。

あっさり諦めた。バスケットと同じで、写真も位置取りで、勝負が決まる。移動。土手の上で回転、もときた道を戻った。土手を斜めに下り、今度は、飯盛川の土手に上がった。

車を、少し脇へ寄せ、外に出た。西風が強い。吹き飛ばされそうだ。それでも、川シモへ向かって、ぶらぶら歩き出した。目の前が、どうっと開けている。だだっ広い農地。多少寒いが、気分はいい。





2007.2.16(金)晴れ。風が冷たい。入間川歩行、番外、越辺川支流飯盛川。荻野2号橋から氷川橋までの両岸。十時から十二時。

まっすぐ、荻野2号橋まで走る。橋を渡り、カントリーエレベーターや石仏などを見て回る。その後は、飯盛川の左岸を遡上。低めの土手道を、うねうね行く。どういうわけか、川の水が、ウンコ色。生き物がいる感じがしない。

県道に突き当たる。氷川橋際に車を止め、外へ出る。川カミで、工事をやっている。看板。河川の拡幅工事、とある。なるほどね。それで、水が濁っているわけか。

回転。戻る形で、今度は、右岸を行く。コンクリの立派な橋が、何本も架かっている。すぐに、合流点。分流にそって、こげ茶の柵が並んでいる。なんだろう。車を回す。

すみよし桜の里。遊歩道になっていた。道沿いには、ひょろひょろした坊主の桜並木。車から身を乗り出し、枝先をじっと見た。小さなつぼみが、たくさんついている。春が近い。花が咲いたら、また来てみよう。





2007.2.17(土)晴れのち曇り。入間川歩行、番外、越辺川。右岸、飯盛川水門付近。十時から十一時半。

小沼の石仏から、土手に上がる。そのまま斜めに下って、土手下の道を遡上。右手の雑木林を見ながら、ゆっくり流す。干上がった沼には、見かけない鳥がいる。コサギに似ているが、首から下が灰色。距離があるので、逃げない。ドジョウでもねらっているのだろうか。

水門に突き当たる。水際に沿って、まだ川原道がある。このまま、車で行ってもいい。だが、白鳥を撮っている人がいる。遠慮しよう。車から降り、歩く。

対岸には、三脚がたくさん並んでいる。アマチュアカメラマンが、群がっているような感じ。白鳥を、半逆光で撮っている。こちらからは、順光。とはいえ、遠すぎる。1000ミリ以上の望遠でないと撮れない。

後を通り過ぎた。チラッと目があった。すぐに顔をそむけ、会釈もしない。風采の上がらない中年男。だが、レンズと三脚は、相当なものだ。100万以上はする。

白鳥も、これで見納めだ。遠目に何枚か撮って、すぐに戻った。土手に上がり、再再度、清掃センターの白い煙突をねらった。中腹に、斜めに立ち、去年撮った構図を再現した。ここしかない、という位置取りで、慎重にシャッターを押した。しかし、こんなときに限って、雲がかかってくる。なんだか、やる気がなくなった。

このまま帰るのも癪だから、順路に従い、土手下の道を、天神橋まで遡上した。橋の下が、少し広くなっている。車を止め、外に出た。日差しが弱い。空を見回した。青空がほとんどない。写真は駄目だ。

水際に、背の高い雑木が何本かあった。そのあたりから、鳥の鳴き声が聞こえる。見ると、枯枝に、雀よりひと回り大きい、茶色い鳥がとまっている。どこかで聞いたことのあるような鳴き声だ。そうおもっていると、急に飛び立った。一羽、追いかけるように、もう一羽。ぴいぴい鳴きながら、空中でじゃれあっている。恋の季節だな。

引き上げよう。車に戻りかけた。頭上で、ピーヒョロヒョロ。振り向く。手をかざし、逆光の空を見上げた。鳶だ。すぐそばに、ふた回りくらい小さい、黒い鳥がいる。カラスかな?そいつが、トンビにちょっかいを出している。はたして、カラスが、自分より大きな鳥を攻撃するものなのか。

少しの間、空を見上げていた。鳶は、悠々と輪を描きながら飛んでいる。カラスとおぼしき鳥は、何度も、急降下を繰り返し、トンビを突っつきに来る。しかし、カラスにしては、鳴き方がヘンだ。さらには、空の高みに、もう一羽、鳶がいる。ゴマ粒のようだが、まちがいない。

カラスじゃなくて、巣立ちしたばかりの鳶のヒナが、親鳥にじゃれ付いているのかもしれない。まあ、いい。生き物達が、春の気配を察し、動きだしている。写真は駄目だったが、鳥の鳴き声をたくさん聞いた。それだけで、十分だ。





2007.2.21(水)晴れ。暖かい。春の陽気。入間川歩行、番外、越辺川。右岸、天神橋付近。十時から十二時。

寄り道。飯盛川、荻野2号橋付近に車を止める。カントリーエレベーターなどを撮る。移動。赤尾の農地を流す。ところどころに、ゴミの山。建築資材などの不法投棄。わずかな金のために、犯罪を犯している。信じられないことだ。

歩行に出るたびに、人間の悪行を、イヤというほど見せつけられる。もう、腹も立たない。

清掃工場の裏手、土手の上がり口に大きな碑がある。気まぐれだ。車から降り、見に行った。正面に、「ぼんやりと日暮れの土手に牛立てる」、とある。裏に回った。跋文があり、詩が刻まれている。

郷土を水害から守ろう
私達年代を生きた人の合言葉である
明治四十年四月第一期勝呂地区耕地整理に於いて赤尾下組林前より諏訪、原、論解、田成、桝田等含む畑地より三芳野村境まで約三五〇米の間延堤工事に着工、翌年三月終了す

ふるさとの詩
一、越辺川の水温むころ 村人達は春蚕の支度 河原は蚕具の洗い干し 家族総出で菰を踏む 小魚寄り来て水辺でさわぐ 遠くの林で郭公が啼く

二、土取場の柳芽を吹けば 菜の花すぎて苗代終わる 御嶽山から筒弼だより 作神様が里に来る  釋迦の祭りが遊びの仕舞 座敷は稚蚕の部屋となる

三、春蚕四令をすぎれば給桑忙し 飯盛川にほど近き 葦の茂みに葭切り啼いて 桑の実赤く熟れ茱茰色づきぬ日長一日黄昏れて 土手に繁れし放牧の牛主を待つ 「ぼんやりと日暮れの土手に牛立てる」

目で、斜め読みした。読めない漢字や、意味のわからない言葉がある。迷うことなく、至近距離で、写真に撮った。帰ってから、ゆっくり解読しよう。

長文の詩には、往年の、農村風景が歌われていた。碑を建立した人々の想いが伝わってきた。昔の生活や風習、景色を懐かしんでいる。自然とともに生きた時間を、いとおしんでいる。

顔を上げた。碑の正面に、清掃センターの白い煙突が聳え立っていた。景色が一変している。悲嘆の声が聞こえる。





2007.2.22(木)晴れ。入間川歩行、番外、越辺川。天神橋から合流点まで、右岸を遡上。十時から十二時。

水際の水深計や黄緑の給水橋を撮る。集中したにもかかわらず、すべて撮りそこね。気に入った写真がない。がっかり。

2007.2.24(土)晴れ。強風。入間川歩行、番外、越辺川。右岸、赤尾落合橋付近。十時から十二時。

荻野2号橋まで、一気に走る。橋を渡り、清掃センター裏手から土手に上がる。そのまま、遡上。県道を突っ切り、黄緑の給水橋の前で止まる。何枚か撮るが、どうしても構図が見つからない。しかも、猛烈な風。吹き飛ばされそうだ。あっさり諦め、土手下におりる。橋脚のフェンスに表示板。越辺川水管橋。名前が判明。

移動。土手が大きく左カーブ。都幾川との合流点が見える。切り返しをして、土手下におりる。おりたところに、石仏がある。じっくり撮らしてもらった。側面に、「赤尾村 願主 山崎庄五郎 同 山崎亀治郎 ・・千治郎」。くっきり刻まれていた。

建立は、願主たちの名前からして、江戸の後期、ないしは明治の初め頃。おそらく、近年の河川工事の際に、現在の場所に移された。謂れや経緯があったのだろうが、知る由もない。それに、今日は、頭が働かない。想像することさえできない。

サングラスと帽子を外すべきだろうか。しゃがみこんで合掌する時に、躊躇した。寒いからと、横着な気持ちがあったからだ。まあ、いい。手を合わせ、目をつぶった。後から、誰かに見られているような気がした。

立ち上がり、川へと続く道を歩き出した。強風というよりは嵐。さすがに、誰もいない。木橋の前で立ち止まった。横に、表示板。スプレーで落書きされている。近寄ってみる。赤尾落合橋。なるほど、やはりちゃんとした名前がある。

向き直った。川カミ側に、斜めの支え木が、きれい並んでいる。やっぱり!冠水橋の構造なんだ。橋の真ん中を、ゆっくり歩き出した。強風にあおられ、万が一にも、バランスを崩したら大変だ。よく言えば慎重、悪く言えば臆病。いや、小心者だな。でも、落ちたら損失が多すぎる。カメラどころじゃない。命まで、川に流されるかもしれない。

川中を、覗き込んだ。深い緑色。冬場だというのに、水量が多い。水面が風にあおられ、水しぶきを上げている。背中がぞくっとした。落ちたら、冷たいぞ。





2007.2.25(日)晴れ。入間川歩行、番外、越辺川。左岸、中山用水堰と水管橋。十時から十二時。

道場橋際から入って、左岸の土手を遡上。天神橋のアンダーパスをくぐり抜け、橋の下へ回り込む。車から降り、水際まで行く。これといった景色はない。

移動。また土手に上がる。水管橋の下を通り抜け、堰の入り口で切り返す。護岸におり、手前に、水門などを入れて撮る。

今度は、土手下の道を、戻る形で進み、麦畑の横で止まる。振り返ると、目の前に水管橋のアーチがある。ちょっと迷うが、畑を横断する。耕作物を踏まないように、気をつける。

水際は、低い崖。葦藁や流木が堆積している。ためらいなく、踏み込む。足が、ずぼっとはまり込む。下に地面がない。少し慎重になる。足場を確認しながら、そろそろ行く。潅木の枝を掻き分け、水辺におりる。渇水で、中洲になっている。

水管橋が、川面に映っている。これさいわいと、写真を撮り出す。しかし、橋脚の垂直とアーチの水平が、なかなか取れない。川の真ん中に立っているのだから、位置取りはベストのはずだ。モニタリングを執拗なまでに繰り返した。これで駄目なら、水管橋の写真は、諦めるしかない。





2007.2.26(月)晴れ。入間川歩行、番外、越辺川。左岸、水管橋から長楽落合橋。十時から十二時。

道場橋から入って、左岸の土手を遡上。白鳥、水管橋などを見て、都幾川との分岐点まで行く。

赤尾落合橋と長楽落合橋。一間ほどのコンクリのたたきでつながっている。前者は越辺川、後者は都幾川の冠水橋。兄弟橋だ。なんとなく、ものめずらしい。風情がある。

写真にするには、どうすればいいのか。水辺におり、下からも眺めて見た。しかし、どうしても絵にならない。まあ、いい。頬に、冷たい風があたる。それが、心地よかった。





2007.2.27(火)晴れ。入間川歩行、番外、越辺川。右岸流域、赤尾、島田地区。十時から十二時。

いつものルート。川越墓園の横を抜け、小沼、横沼の農地を一直線。土手を上り下りして、荻野2号橋をわたる。あとは、飯盛川の左岸を遡上。

赤尾、島田地区の広大な農地。いくつかある、石仏や記念碑などを見てまわった。むかし撮った、お地蔵さんや野仏も健在だった。

初めて手にした一眼レフは、ニコンのF70D。石仏や山野草を、一枚一枚、慎重に撮った。しかし、まともな写真が、なかなか撮れない。理由のわからないまま、そのうち飽きてしまった。あれから、十年はたっている。





2007.2.28(水)晴れ。入間川歩行、番外、越辺川。右岸、島田橋付近。十時から十二時。

荻野2号橋を渡り、農道から清掃センターを、何枚か撮る。明かりがベストじゃない。帰りにまた寄ってみよう。

農地を突っ切り、土手に上がる。ちょうど、赤尾落合橋の少し先。そのまま、右岸土手を遡上。静かで、良い所だ。だが、写真に撮るような景色はない。

右手、眼下に木橋が見えてくる。切り返して、川原に下りる。橋の横に車を止め、外に出る。強風。話にならない。でも、手がかじかむほど冷たくはない。

真新しい木の看板。「風林火山 ロケ地 越辺川島田橋」。一瞬、何のことかわからなかった。あ~あ、NHKの大河ドラマだ。近寄って、よく見た。以前にも、何回かドラマのロケ地になっている。

納得した。形のいい木橋だ。とはいえ、今日は、明かりを逸した。構図としては、北西方向の山並みを背景に入れる。それが、やや逆光。地上の物体に露出を合わせると、空の青さが撮れない。

案の定、駄目だ。空がとんでいる。迷った末に、アップすることを断念。横着をしちゃあ~いけない。午前中一番で、また撮りに行こう。





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