2005.11.1(火)晴れ。入間川十番、八瀬大橋。九時から十二時。 八瀬大橋を渡る。回り込むような形で、右岸の橋の下へ行く。廃線を歩く。産廃の丘にも登る。
いい天気だというのに、体調がよくない。痔が悪化している。それに、左目が、また濁りだした。気分もさえない。早々に引き上げ。
2005.11.3(木)曇り一時晴れ。入間川歩行はお休み。 2005.11.5(土)晴れ。入間川十番、八瀬大橋。九時から十一時。 八瀬大橋を渡る。橋際の信号を通り過ぎ、すぐに左に折れる。刈り取りの終わった田んぼ。その間の細い道を行く。電波塔が、青空に際立っている。休耕田にはセイタカアワダチソウ。ススキの穂も見える。 広い農道に車を止め、廃線の上を歩きだす。気分はいい。
今年の春先だ。雪の降ったあくる日、写真を撮りに来た。静かな所で、思いのほか気に入った。そのときに思った。今度、天気のいい日に、ゆっくり歩いてみよう。 西武安比奈線。廃線マニアの間では有名なところらしい。ネット上に、その種のウェブサイトが幾つもあり、安比奈線についても、詳細なレポートが、写真入りで公開されている。由来、現況を知るのに参考になる。 鉄路は、背の低い雑草に覆われていた。枕木も見えない。ただし、真中に、ヒトの歩いた跡がある。一直線に続いている。「線路内立ち入り禁止」。看板が目に付いた。なに、かまうものか。行けるところまで行ってみよう。 廃線は、細い道路で何箇所も寸断されている。そのたびに、民家の庭先に入り込み、迂回する。足元には、アカマンマ、ヨメナ、センダン草、ほかにも、名前の知らない小さな花が、たくさん咲いている。 少し先で、線路と枕木が、あらわになっている。なにかと思えば、下に、干上がった水路があり、ちょっとした鉄橋になっている。線路は、赤茶色。だが、しっかりしている。それにくらべ、枕木のほうは、完全に、朽ち果てている。渡ってみようか。一歩一歩、慎重に進む。バランスをとるのが難しい。さして高い所ではないが、転落したら、洒落にならない。 無事に渡り終える。振り返り、写真を撮る。さらに行く。また、柵がある。しかし、これ以上、前へ進めない。というのも、左手は民家、右手はコンクリの細長い塀。迂回することさえできない。もういいだろう、ずいぶん歩いた。それでも、いちおう、背伸びして、柵の向こう側を確認した。道を挟んで、線路が続いている。ただし、両脇に家が建っている。見通しはよくない。それに、どこから入り込むのか、見当もつかない。やはり、またの機会にしよう。 向きなおった。今歩いてきた、廃線の道が、一直線に続いている。その先には、こんもりとした林があり、中をぬけていけば、入間川に出る。左目不調。さらに、痔まで出たが、気分の落ち込みはない。最高の、小春日和だ。
2005.11.6(日)曇り。夕方からは雨。入間川歩行はお休み。 八時半にアトリエを出る。親水公園南側広場へ行く。車の中で、写真紀行(土曜日分)を書く。十一時引き上げ。 午後は昼寝。三時半頃起きる。写真紀行(10月分)の印刷。A4で、17頁しかない。しかも、内容がうすい。挿入写真も、新しいカメラで撮ったせいか、色合いにばらつきがある。最初のうちは、明らかに失敗。色が濃すぎる。不自然。けっきょく、カラー、コントラストのレベルをゼロに戻した。標準仕様が、一番いい。とはいえ、露出補正は必須。晴天時、0.3オーバーで、ちょうどいいかもしれない。 プリンターから出てきた用紙を、順番に並べる。少し乾かし、クリアブックに収める。収めたところで、今一度目を通す。質、量ともに、貧弱。どこか、うわの空。すぐに、思い当たった。パチンコだ。調べてみると、10月は、7回やっている。回数は、さほど多いとは思えないのだが、あきらかに、集中力をそがれている。写真紀行に、気持ちが入っていない。 文章とは、恐ろしいものだ。書いてないことまで、読めてしまう。
2005.11.8(火)晴れ。入間川十番、八瀬大橋。九時から一時半。 朝の日課、数息の最中に、今日一日の予定を、ざっと思い描く。水上公園に車を止め、右岸の、関越橋から初雁橋までの土手を歩く。でも、天気がいいのに、景色のよくないところを歩いてもしょうがないだろう。それよりは、関越道の路線橋へ行こう。高い所だから、秩父の山並みが見えるかもしれない。 路線橋の上がり口に車を止めた。舗装された坂を少しのぼる。たしかに、西側の山並みは見える。ただし、民家や雑木が邪魔だ。期待していたほどの景色ではない。何枚か撮ったが、絵にならない。 移動。関越道の側道を走る。行き過ぎたので、消防署の手前で回転。少し戻る。路肩に車を止め、刈り取りの終わった田んぼの畔を歩きだす。 地名は、川越市豊田新田。場所としては、川越南高校の裏あたり。関越道の川越インターへ出る裏道沿いで、昔よく通ったことがある。ぐるっと見渡せるほどの田んぼだが、ポンプ小屋が点在していて、風情がある。
見覚えのあるポンプ小屋がある。写真を撮り始めた頃、手漕ぎポンプを撮りに、何度か来たことがある。十年ほどまえだ。はるか昔のような気がする。 十一時半、集中力が切れた。いったん車に戻る。引き上げには、まだ早すぎる。なにしろ、秋晴れ。最高の小春日和。車を走らせながら思案していた。ふと、「ごっこ村」の看板が目に入った。道路を横断し、川原へと入った。 砂利の敷かれた、ちょっとした広場。そこから、道が何本も出ている。まずは、一番右端の道を行く。竹やぶの中を行くような悪路。ゲートボール場があり、両脇は、柵やロープで囲われた産廃置き場。関越道の橋の下で行き止まりだ。 前に来たときには、不穏な空気が漂っていた。だが、今日は、人の気配がしない。枯れかけた雑木にも、葉がついている。不逞の産廃業者どもは、退去したのかもしれない。 橋の下。鮮やかなブルーシートの小屋が、茂みの中にある。やせた番犬はいないが、足の悪いホームレスは、健在なのだろう。いつ来ても陰気な場所が、今日に限って、どことなく明るい。天気のせいかもしれない。 戻った。右から二番目の道を行く。すぐに行き止まり。というか、産廃業者の敷地にぶつかる。でかい産廃の山が、葛の葉で覆われている。しかし、その後ろには、廃材が積み上げられている。また小山ができるのだろう。回転。プレハブの監視小屋に人影はない。バリケードに使われているトラックも廃車。静かだ。作業は、夜陰にまぎれ、こっそりやっているにちがいない。 戻る。右から三番目の道を行く。これもすぐに行き止まり。崖。河原が見通せる。それにしても、ゴミだらけ。何かを燃やした跡もある。ひどすぎる。話にならない。それでも、いちおう、車からおりる。下水溝があり、どす黒い水が、川に流れ込んでいる。いったんは、河原へ下りかけたが、気分が乗らない。回転。 右から四番目の道を行く。「ごっこ村」の脇を通り抜け、八瀬大橋の下に出る。さすがに平日、バイク野郎の姿はない。産廃の丘に、オフロード車もいない。建材工場のダンプが、のろのろ動いているだけだ。護岸に腰を下ろし、対岸をゆっくり眺めた。
2005.11.10(木)晴れ。スカッとした青空。小春日和。入間川十番、八瀬大橋。九時から二時。 左岸の土手を、八瀬大橋から関越橋まで、歩くつもりでいた。昔、よくジョギングなどをした、なじみの自転車道だ。お目当ては、西側の、雑然とした耕作地に並んでいる電柱。何回も撮っているのだが、脇を車で通るたびに、気になる。
天気がいいせいか、ヒトの姿が目に付く。軽トラで廃材を置きに来る奴。写真を撮っているそばで、体操をやりだす婆さん。残土を運び込む造園業者。犬の散歩、ジョギング、自転車に乗った主婦。次から次へと現れる。なんだか、気持ちが落ち着かない。十一時、移動。 橋を渡り、ふたつ目の信号を左折。荒地のセイタカアワダチ草は、きれいに刈られていた。廃線を横切り、さらに、田んぼの中の小道を、うねうね行く。池辺の集落を抜け、関越道の側道に出る。一昨日、ポンプ小屋を撮ったところだ。気になっているのは、この側道の向こう側。一度や二度は、行ったことがあるはずだ。それなのに、ぜんぜん思い出せない。 関越道の横っ腹をくぐり、反対側の側道へ出る。なんとなく見覚えがある。車を止め、ひと息入れる。田んぼの中の手漕ぎポンプが目に入ったので、何枚か撮る。車を出す。このまま、側道を行ってもしょうがない。それよりも、向こうに見える、白い建物はなんだろう。ハンドルを右に切る。 道路に出る。あっ、この道は知っている。水上公園から来ている道だ。となると、この先に、小学校がある。その信号を、左に曲がればいい。
白い建物は、音大だった。広い道路をはさんで、向かい側が、どっと開けている。鉄塔が際立っていた。
2005.11.12(土)晴れ。木枯らし一号。風が冷たい。入間川九番、関越橋。九時から一時半。 大東東小付近。西側の山並みが、少し見える。雲がいい。
尚美音大の向かい、豊田本のだだっ広い田んぼ。今日も、赤い横縞の鉄塔を撮る。明かりの具合はいいのだが、鉄塔の垂直が出ない。かなり粘ったが、あきらめる。 移動。職安前の、広い道路に車を止める。平日なら、ヒトと車でごった返している場所だ。路上駐車など、思いもよらない。でも、今日は土曜日。閑散としている。これさいわいと、道路を、いま来た方向へ、ぶらぶら歩く。冷たい風が吹きぬけていく。立ち枯れた雑草が、かさこそ音を立てる。木枯らし一号、だそうな。なるほど、冬の気配だ。
川越の市街地が見える。
2005.11.13(日)晴れ。小春日和。入間川九番、関越橋。九時から二時半。 川越水上公園に車を止める。右岸、初雁橋から関越橋まで、水際の枯野を歩く。夏場は、背丈ほどの葦が繁茂している川原だ。久しぶりに足を踏み入れる。 あきらかに、人手が入っている。草刈機で、きれいに刈ってある。広い所なのだから、かなりの労力がいる。何のために、わざわざ鳥のねぐらを一掃したのか、理解に苦しむ。 水際は、ちょっとした崖になっている。首を伸ばし、川の中をのぞく。水量は少ないが、驚くほどきれいだ。その、静かな流れの中に、鯉が群れをなしている。ヒトの気配を嫌って、ここまで逃げてきた。ゆるゆると泳ぐ様が、みずみずしい。 対岸の工場や鉄塔が、川面に映っている。反射的にカメラを構える。ファインダーをのぞく。あとは、枯れ野を、後ろを振り返りながら歩いた。遠くに、初雁橋が見える。車が等間隔で走っていく。その影が、下の流れに反映する。陽をうけ、きらっと光る。 枯野が切れたところに、小さな河原がある。疲れた。ひと息入れよう。どっかと腰をおろした。時計を見ると、十二時近かった。三時間くらい、歩いていたことになる。疲れるはずだ。靴を脱ぎ、ついでに靴下まで脱いだ。風もない。あたたかい。じつに穏やかだ。 これからの予定を考えた。土手の上を歩いて、車に戻る。県道の吉野家で昼食。また、水上公園へ戻る。今度は、東側の、豊田本の田んぼを歩く。遠目から、川越の市街地をねらう。ちょうど、明かりが回ってくる頃あいだ。 腰を上げた。関越道が目の前に見える。その脇の木立から、煙があがっている。ホームレスの小屋のあたりだ。一瞬、火事かと思ったが、そうじゃない。昼飯の支度をしているんだ。 いちおう、河原を歩けるところまで歩いた。土手向こうに、工場の屋根だけが見える。向き直った。木立の間に、水上公園の白いポールが見えた。両方とも、去年、写真紀行を書き始めた頃に撮ったことがある。なに、たいした写真じゃない。そのときに、文章も書いた。こっちも、たいした文章じゃない。いわば、安手のセンチメンタリズムだ。あそこには、もう、二度と戻らない。
2005.11.17(木)晴れ。風は冷たい。入間川九番、関越橋。九時から二時半。 寄り道。八瀬大橋際、右岸の工事中の道。「関係者以外立ち入り禁止」。なに、かまうものか。柵をまたぐ。辺りの様子を窺いながら歩く。道は、安比奈の建材工場まで続いていた。
的場工場団地の西側、左岸、関越橋際に車を止める。橋の下へ下り、河原を、行き止まりまで歩く。少し迂回。今度は、護岸の上を歩きだす。川の水がきれい。浅瀬の鯉が、驚くほど俊敏だ。途中、ホームレスの横を通り過ぎる。スポーツ新聞を広げている。無視。視線を向けることもしない。護岸が一直線に続いている。川が青い。空が青い。 初雁橋が見える。水の引いた川底に下りる。対岸では、重機が荒地を整備している。いや、護岸を作るのかもしれない。足元の悪い水際を歩く。今日は登山靴を履いている。立ち止まる。風が冷たい。背中の汗が、冷えていく。顔をあげ、橋を眺める。ひっきりなしに車が通っている。好きな景色だ。何枚も撮る。だが、どうも気に入らない。川の流れに対して、橋が垂直に交錯していない。右下がりだ。どうしても、間の抜けた構図になってしまう。 護岸に上がった。水門の脇をぬけ、土手下の道に出る。監視塔などを撮りながら、ぶらぶら戻り始める。気まぐれ。高い土手に登る。見通しはいいが、あいかわらず、絵にならない。すぐに、並行している自転車道に下りる。後ろを振り返りながら、歩く。昔、ジョギングで汗を流した道だ。だが今日は、ほとんど心が動かない。それよりも、このあとの予定を考えていた。 車に戻り、初雁橋を渡る。小ヶ谷のラーメン屋で昼飯。ラーメンが、たしか四百円。うまいのか、まずいのか、一度は食べてみよう。 また土手に上がった。真ん中に、散歩道ができている。前を向いて、さっさと歩きたいところだが、ふざけたことに、犬の糞がある。なに、犬が悪いんじゃない。飼い主のマナーが、なってない。足元にも、気を配る。あとは、後ろも振り返らずに、ずんずん歩いた。 一時過ぎ、橋の下のラーメン屋で、ラーメンと餃子を食べた。安いわりには、まずまず。麺は、シコシコしていて、うまかった。帰りがけに、裏手の田んぼに寄ってみた。今日もまた、鉄塔が目に付く。撮るしかないだろう。
2005.11.19(土)晴れ。手がかじかむほど、風が冷たい。秩父颪というよりは、上越からの強い北風。大陸の寒波が居座っているらしい。入間川八番、初雁橋。九時から二時。 的場の浄水場脇に車を止める。寒さ対策。防寒着上下、マフラー、帽子、手袋をつける。初雁橋を渡り、右岸の水深計や鉄橋などを撮る。最高の写真日和。集中して、何時間も撮る。さほど疲れなかった。登山靴を履いていたからかもしれない。横着しないで、まめに履き替えるべきだ。
なじみの水深計は、健在。しかし、今回も、またこの構図。馬鹿のひとつ覚え。同じような写真を何枚も撮っている。
山並みの、一番右。外秩父の笠山。通称「おっぱい山」。この山が見えると、どうしてもカメラを向けてしまう。
初雁橋の上から、川越線鉄橋の全貌を撮るのはあきらめた。背景に立つ鉄塔の垂直が取れない。なかばヤケクソで、川の蛇行を撮った。
2005.11.20(日)晴れ。晴れ。風が冷い。入間川八番、初雁橋。九時から一時半。 右岸、川越橋の際、土手の上に車を止める。西側の景色を見ながら、土手道を東上線鉄橋まで歩く。土手を下る。今度は、河原に下りる。水際を歩いて、川越橋へ戻る。
風が強い。川面が波立っている。よく見ると、波が、川シモから川カミへ向かって動いている。むろん、表面だけだろうが、逆流している。不思議な気がした。顔をあげ、北側の空を見た。上越の山並みに、雲が出ている。南側を見た。逆光の中、川が、浅瀬で音を立てていた。
2005.11.22(火)晴れ。小春日和。入間川八番、初雁橋。十時から一時。 的場浄水場脇に車を止める。初雁橋際から、左岸の土手に入る。川シモへ向かって、ぶらぶら歩き出す。
平日の河川敷クランド。人っ子一人いない。まさに貸しきり状態。白線を利用して、目測の練習をした。
撮るものは、いつも決まっている。鉄橋、鉄塔、それに、今日は青い空。なにか、象徴的な意味があるのだろう。
2005.11.24(木)晴れ。小春日和。入間川八番、初雁橋。九時から十二時半。 川向こうの、小ヶ谷、今成地区の田んぼへ行く。農道を車で流しながら、景色を探す。鉄塔が一基、目に付いた。
移動。上寺山の田んぼへ行く。はじめは、土手の東屋と鉄塔をねらった。しかしどうしても、鉄塔の垂直が取れない。あきらめて、ポンプ小屋を撮る。
十一時半。移動。川越橋を渡り、左岸の土手へ行く。東上線鉄橋へ向かって、目測の練習をする。一歩50cmとして計算。50m、100m、150m、200m、とキリのいいところで立ち止まり、後ろを振り返る。目で、距離感をつかむ。鉄橋までは、約335m。遠いようで、わりと近かった。
2005.11.26(土)晴れ。小春日和。入間川七番、川越橋。九時から十二時半。 右岸、川越橋際。土手の上に車を止める。渇水した河原へ下りる。川シモの雁見橋へ向かう。いい天気だ。これほど穏やかな日も、めずらしい。それに、人の気配がしない。
2005.11.27(日)晴れ。小春日和。入間川七番、川越橋。九時から一時半。 右岸、雁見橋際。土手の上。自転車道の脇に車を止める。土手を下りる。護岸から、雁見橋を撮る。
移動。東側の上寺山の田んぼ。先日撮ったポンプ小屋より、さらに市街地よりの農道を、車で流す。星野女子高の銀杏が黄色い。そばまで行ったが、ロケーションが悪い。通り過ぎる。さらに行くが、ますます住宅がたて混んでくる。一枚も撮らずに、別の道を通って戻る。 右岸、川越橋付近。東側の農道に車を止める。下から、土手の東屋を撮る。土手に上る。市街地のほうへカメラを向ける。
最近、記述に、手を抜いているようで心苦しい。一言だけ、言い訳をする。連日の歩行で、多少疲れている。いいや、じっくり腰をすえて、書く気分ではない。写真撮影に夢中、というほどでもないが、今は、撮ることに集中している。
2005.11.29(火)曇りのち晴れ。風は強いが、さほど寒くない。入間川六番、雁見橋。九時から十時、一時半から三時。 右岸、雁見橋付近の土手。土手下の道に下り、川シモを撮る。とたんに、陽が翳ってきた。予報では、午後からは晴れ。それまでの時間つぶしだ。防寒ジャージーなどを買いに行く。
一時半、先ほどの場所にいる。予報通り、見事に晴れた。青空にはぐれ雲。川原を、電波塔へ向かって、歩き始めた。
露出補正、プラス0.7。ほぼ、思い通りの色合い。
2005.12.1(木)晴れ。朝のうちは雲が多い。入間川六番、雁見橋。九時から二時半。 左岸、雁見運動公園付近に車を止める。土手下の道、車止めのコンクリブロックを撮る。
移動。西側の鯨井の田んぼへ行く。だだっ広い所。農道を、車で流しながら、景色を探す。外秩父の山並みが、青空にくっきり。ただし、これといったものが、目に入らない。鉄塔、ポンプ小屋、電信柱。どれもこれも、絵にならない。いや、誰かに見られているような気がする。なんとなく気分が乗らない。
移動。小畔川の遊水池。路肩に車を止める。橋(精進場橋)の上から川シモを眺める。鉄塔が、青い川面に映っている。天気がいい。気分もいい。舗装された土手の上を、歩きだす。背中に陽射しを受ける。あたたかい。防寒着を脱ぐ。水門まで行って、戻ってくる。
小畔川。落合橋の先で、越辺川と合流する。ということは、越辺川の支流だ。もっとも、越辺川も、釘無橋の先で、入間川と合流する。だから、小畔川も、入間川の支流と言って差し支えない。ずうっと、そう思っていた。 小畔川。アトリエの裏を流れている小川。一番身近な川。絵になるような景色はないが、いつかは、丹念に歩くつもりでいた。本当のことを言えば、最後の最後まで、残しておきたかった。だが、その「いつか」が来た。わりと早かったな。 午後の、二時。陽は、まだ高い。きのう撮り損ねた、電波塔を撮りに行こう。
2005.12.3(土)晴れ。昼ごろから雲が出る。入間川六番、雁見橋。九時から十二時。 右岸の土手、上寺山用水堰付近に車を止める。辺りを歩く。
同じような構図で何枚も撮る。しまいには、善し悪しの判断がつかなくなる。それに、いい天気だというのに、気分が、いまひとつ乗らない。 歩行も写真も、すこし飽きたようだ。こういうときは、無理をしない。気分転換。買い物にでも行こう。
2005.12.4(日)曇りのち小雨。寒い。入間川歩行はお休み。 今日は午後から崩れるらしい。ちょうどいい、骨休めだ。連日の歩行と撮影で、少し疲れた。 生活用品を買いに、スーパーや電気店へ行った。曇り空の中、どこもかしこも、車と人であふれていた。冬支度、というわけか。
2005.12.6(火)曇りのち小雨。寒い。入間川歩行はお休み。 午前中は、2004想念草子(1)の校正。午後は、買い物。前から気になっていた「ワカバウォーク」へ行く。映画館などもある大型の商業施設だ。 「VAN」の文字にひかれて店に入った。ワゴンセールの、灰色のVネックセーターを買った。千円。あまりにも安い。レジで、店の人に聞いた。昔の「VAN」が復活したのかと思ったからだ。いや、そうではなく、「VANジャケット」から分かれた、「VANファミリー」なのだという。店長と思しき若い男性は、愛想がいい。丁寧な言葉遣いだった。 Lサイズのセーターは、案の定、大きすぎた。だぶだぶで、みっともない。少し失望したが、すぐに機嫌をなおした。安いわりには、モノがいい。それに、ほのかに、オイルのような匂いがする。昔の、「VAN」のセーターの匂いだ。
2005.12.8(木)晴れ。日中は暖かい。入間川歩行六番、雁見橋。九時から十二時半。 はじめは、西側の鯨井の田んぼへ行った。歩き足らないような気がしていたからだ。あぜ道に入り込み、執拗なほど、鉄塔をねらった。 移動。広い道路に車を止める。向かいは、清掃センター建設予定地。広大な敷地が、柵で囲まれている。整地されただけで、まだ何も建っていない。縦断する鉄塔が際立っている。車で、何回も横を走っている。だが、歩くのは、今日がはじめてだ。
柵が切れた。角は資材置き場。轍のついた道が、土手まで続いている。向き直った。番外、小畦川だ。
舗装された土手道を、精進場橋へ向かって歩いた。右手には、更地の建設予定地。一望できる。さらに行くと、土手下に、遊水池。前来たときに比べると、水鳥の数が少ない。葦の茂みもなくなっている。なんとなく、のっぺらぼうな感じ。 車を目で探した。更地の向こうに、小さく見える。ただし、突っ切るわけにはいかない。柵で囲まれている。遊水池の周りを、ぐるっと、迂回していくしかない。ちょっと、うんざりした。時計を見たら、十二時を回っている。撮りながらとはいえ、三時間以上も歩いている。 急に疲れが出た。もう、写真を撮る集中力がない。周りの景色が目に入らない。うつむきかげんに、さっさと歩いた。とはいえ、精進上橋付近で、一度だけ立ち止まった。雲が、鉄塔にかかっている。それに、川鵜が三羽、日向ぼっこだ。
2005.12.10(土)晴れ。日中は、さほど寒くない。番外、小畔川。九時から一時半。 右岸、八幡橋の少し先、土手の路肩に車を止める。川カミの金塀橋まで、歩きながら撮る。橋を渡り、左岸を戻る。
小畔川の土手道は狭い。車のすれ違いができない。まずは、駐車場所の探索。区分けと命名は、そのあとでいいだろう。
2005.12.11(日)曇り。真冬の寒さ。入間川歩行はお休み。 九時過ぎにアトリエを出た。天気がよくない。車の掃除でもしようか。いったんは、親水公園へ向かった。しかし、すぐに気が変わった。寒い中、掃除なんかやってられない。 歩行の下見だ。雁見橋から平塚橋の東側。だだっぴろい田んぼが広がっているが、地形も景色も、まだ、頭に入っていない。車で流してみよう。 いつの間にか、歩行の範囲が、流域に広がっている。
2005.12.13(火)晴れ。寒い。入間川五番、平塚橋。九時から十二時。 雁見橋を渡る。右岸の土手道に入る。平塚橋へ向かって走る。西側の山並みが手に取るようだ。思わず、車を止める。
移動。平塚橋を渡る。左折。土手に車を止める。寒風の中、平塚橋を歩く。つかみ所のない景色。最高の写真日和なのに、写真にできない。未練がましく、二、三枚スナップを撮る。 橋の下へおりる。渇水で、干上がった川床を歩く。風がやんだのか?いや、頭の、ずっと上を吹き抜けていく。
2005.12.15(木)晴れ。寒い。番外。二時から三時。 昼過ぎまで用事。一時半を回っていたが、入間川に出ることにした。川越橋を渡る。右岸の土手を、川シモへ向かう。東側の景色を見ながら、ゆっくり走る。田畑の中に、住宅がたてこんでいる。雑然とした感じ。写真にならない。 落合橋の手前で土手をおりる。戻る形で、土手下の一般道を走る。平塚橋を渡る。左岸の土手に入る。川カミへ向かう。シャーペン工場の横で、土手をおりる。上寺山用水堰による。 水量が少ない。堰の上を歩く。立ち止まり、川シモを眺める。川が青い。空も青い。遠くに、平塚橋が見える。気持ちが清々する。カメラを構える。だが、どうしても、絵にならない。ふうっと、上体を右に振る。土手の向こうに電波塔。またか。なに、かまうことはない。撮った。 移動。川原道を走る。雁見橋をくぐる。土手下の道を川越橋へ向かう。浅間堰による。護岸で、自転車のホームレスが、日向ぼっこをしている。少し離れて、車を止める。
黒いワーゲンゴルフが一台、護岸に止まっていた。帰り際、窓越しにチラッと見た。服を着たまま、男女が重なり合っている。一瞬、眉をひそめた。こんな時間から、車の中でいちゃついている。しかし、すぐに思いなおした。若い欲望だ。わからないことはない。それどころか、うらやましい気さえした。
2005.12.18(日)晴れ。強風。最大級の寒波。寒い。入間川五番、平塚橋。九時から二時。 外秩父の山並みが、くっきり見える。寄り道しよう。農閑期の鯨井地区。おりしも、巨大な雲が、空を横切っていく。
移動。小畔川右岸、小坂橋から、土手の上を走る。鎌取橋を渡り、土手下の道を行く。右手に障害者施設、左手は廃棄物最終処分場。すぐに、旧小畔川、大谷川にぶつかる。水門の工事をやっている。土手の向こうは、越辺川だろう。
大谷川に沿って、さらに行く。左手に産廃工場、その隣には、また、障害者の授産施設。そこで行き止まり。引き返そうと思ったが、まてよ、塀に沿った細い道がある。この際だ、行けるところまで行ってみよう。
大谷川の両側には、広い田畑が広がっていた。遠くに、東秩父の低い山並みも見える。しかし、ここはもう、越辺川の流域だ。なに、かまうものか。広い畔道を、縦横に走り回り、絵になる景色を探した。
2005.12.20(火)晴れ。寒い。入間川五番、平塚橋。九時から十一時。 左目不調。それでも、いつもの時間にアトリエを出た。右岸の土手道、平塚橋から落合橋までを、車で流す。群馬、上越の山並みが見える。真っ白。めずらしいことだ。撮るには撮ったが、あまりにも遠い。それに、どうも調子が出ない。目のことが気になっている。早々に引き上げ。 久しぶりに、坊主。アップする写真が一枚もない。
2005.12.22(木)晴れ。今日も寒い。入間川歩行はお休み。 左目、さらに不調。歩行を自重する。とはいえ、気持ちは取り戻した。何か書こう。 ウエブサイトのトップページに、写真を一枚掲載している。去年の春先に撮ったもので、対岸の土手下の道を、遠足の小学生達が歩いている。土手の緑に、赤や黄色の帽子、青やピンクのザックが鮮やかだ。気持ちが、ふうっと軽くなった。 かなり気に入っている写真なので、長い間掲載していた。ところが、最近になって、空の色が気になりだした。どうも不自然だ。とうてい、青空とはいえない。 青い空を画面に取り込む場合、その割合が多くなるにつれ、地上は暗くなる。当然、露出をオーバー気味にかける。しかし、そうすると、空の青さが失われる。これは、カメラの特性であり、致し方のない話だ。 大雑把に言えば、青空と地上の露出を、二で割ったものが、カメラの適正露出となる。青空の割合が多ければ、地上は暗くなる。地上の割合が多ければ、青空が白っぽくなる。件の写真は、地上の割合が多いから、どうしたって、目で見た空の青さが再現されない。もっとも、一番大切なのは、豆粒のような、小学生の行列だ。だから、青空には、多少の不具合を我慢してもらったわけだ。 いいや、去年の春先だ。まだ露出補正などしていない。カメラ任せで撮っていた。撮った後に、画像補正をしていた時期だ。ま、いい。とにかく、空の色にひっかかっている。不自然だ。 最近は、画面全体のバランスを、神経質なほど気にするようになった。たとえば、物体の布置、垂直と水平、天地の間隔、色合い。それらが渾然一体となって、秩序を生み出す。無駄なものは、ひとつもない。「静けさ」を、写真に定着させたいと思っている。 かわりの写真を探した。数はあるが、これといったものが、なかなか見つからない。理想が高すぎるのかもしれない。分身と思える写真は、いくらもなかった。
2005.12.24(土)晴れ。入間川歩行はお休み。 左目不調。歩行を自重する。アトリエで、HP(デジカメ帳)の手直し。午後からは買い物。リーバイスの黒ジーンズ、アディダスのトレーナーを買う。どちらも、安いわりには物がいい。満足。 身なりに無頓着になったのは、いつ頃からだろう。どこへ行くにも、黒のジャージーを穿いていた。そのせいで、ずいぶん甘く見られたような気がする。もっとも、衣服に金をかける余裕はなかった。おしゃれを、封印していたのだ。 ここ何年かは、近くのユニクロで、安物ばかり買っている。上から下まで、ほとんどの物が、五千円以内で買える。安いに越したことはないが、いかんせん、物がよくない。貧相な感じがする。それでも我慢していた。服装なんて、どうでもいい。問題は、中身だ。相変わらず、強がっていた。 先日、「VANファミリー」で、バーゲン品のセーターを買った。千円、安い。もののはずみだった。とはいえ、ユニクロのセーターとは、比べものにならない。はるかに物がいい。あいにく、サイズがL。ダブダブで、外には着ていけない。部屋着にしているが、ニットの感触が、じつにいい。愛着を感じている。 通常の売値は、いくらだったのだろう。おそらく、七、八千円前後だ。ブランド品セーターなら、最低一万はする。そう考えると、高くはない。手の届く範囲だ。 何十年もの間、粗末な衣食住を甘受してきた。それもこれも、芝居のためだ。だが、今となっては、その必要性も消えた。もう、ユニクロで買わなくてもいいのだ。
2005.12.25(日)晴れ。強風。寒い。入間川歩行はお休み。 左目不調。昨日に引き続き、歩行を自重する。HP(デジカメ帳)の手直し。 HP「画像集 デジカメ帳2002-2004」の表題を変えた。「デジカメ帳」という題が、ダサい。「画像集 知らぬ世2002、2003」とした。それにともない、画像も選択しなおした。とはいえ、ろくなものがない。2002年度は20枚、2003年度は60枚、やっとのことで選び出したが、なんだか、とても情けない。やる気がなくなった。 構図というか、バランスがよくない。もっと悪いのは、色合いが非常に不自然。露出補正をしていないのだ。おまけに、画像補正も未熟。よけい、悪くなっている。 データベースから、一枚一枚、引っ張り出し、再度の画像補正を施す。しかしながら、原画がよくない。やはり、補正すればするほど、悪くなる。もう、お手上げ。根を詰めすぎ、左目が重ったるい。適当なところで切り上げた。 それにしても、納得できる写真が、ほとんどない。それもそのはず、まだ、遊び半分で撮っていた時期だ。思い込みが強く、独善的。写真を見る目がない。撮る技術もなかった。 2004年の春に、知り合いの美術家と個展を開催した。飾った写真の多くは、この時期のものだ。まったく、無茶なことをしたものだ。厚顔無恥。冷や汗が出てくる。
2005.12.27(火)晴れ。強風。寒い。入間川五番、平塚橋。十時から十一時。 左目が、少しよくなってきた。思い切って、入間川へ出ることにした。とはいえ、寒さに、身体が臆病になっている。防寒着を二枚、重ねて着た。南極へでも行く格好だな。着膨れて、体を動かすのが窮屈だ。 雁見橋際から、右岸の土手道に入る。今日も、西側の山並みがいい。どれ、一枚撮っていこうか。外に出た。ところが、北西の強風。吹き飛ばされそうだ。それに、考えられないほど冷たい。即座に、指がかじかんでしまった。写真どころじゃない。 作戦を変えた。東側の農地へ下りよう。吹きさらしの土手の上よりは、多少風が弱いはずだ。 一面、農閑期の田んぼ。鉄塔があり、真っ青な空。北風に乗って、雲が来る。勇んで、外に出た。いやぁ〜、ここも寒い。おちおち撮っていられない。すぐに、車に戻る。こうなったら、最後の手段。横着だが、車の中から撮ろう。 農道を流しながら、さらに、景色を探した。場所は、寺山地区。土盛りされた土手が、およそ五、六百メートル、農地を貫通している。なにやら、新しい道ができるらしい。それにしても、なぜ、こんな田んぼの真ん中に、高速道路のようなものを作るのか、理解に苦しむ。しかも、中途半端なままで、もう、かなりの時間が経つ。とはいえ、風景としては面白い。
だだっ広い農地の真ん中に、突如として、高い土手。几帳面なほどきっちりと、番線の柵に囲われている。
2005.12.29(木)晴れ。午前中は無風。午後から強風。寒い。入間川五番、平塚橋。九時から一時。 雁見橋を渡る。右岸の土手道へ入る。堰の手前、流れが真っ青。思わず、車を止める。かなり粘って撮る。
移動。平塚橋際から一般道におりる。寺山地区へ行く。工事中の土手。柵をまたぎ、急な斜面を登る。上は平ら。立ち枯れた雑草が、北風になびいている。ぐるっと、まわりを見回した。たいした景色じゃない。一枚も撮らずに、おりる。 看板があった。道路の断面図が描かれている。左側は、土手の状態。右側は、完成図。ふ〜ん、土手の上に道路ができるんじゃないんだ。造った土手をならし、そこに、道路を作る。「プレロード工法」と書いてある。壊してしまう土手を、なぜ造るのか。よくわからない。 農地を貫通する土手。これも仮の姿。そのうち消えてしまう。とはいえ、感傷的になることはない。万物流転。時の流れをとめることはできない。 移動。落合橋へ行った。橋の下で工事をやっている。水深計の周りが、オレンジ色のネットで囲われている。水位観測所を作っているらしい。お気に入りの風景が、またひとつ、この世から消えた。なんとなく、いまいましい。 落合橋を渡った。川島町井草地区。越辺川の東側の流域になる。だだっ広い田畑を期待していたのだが、民家ばかり。そのうち県道にぶつかる。否応なく、左折。道場橋を渡る。西側の、見晴らしのいい農地に出てしまった。地名は、坂戸市紺屋。何回か来ている。 脇の農道に入り込む。上流の鉄塔や、工事中の橋脚を撮る。疲れている。集中力がない。早々に引き上げ。とたんに、電信柱が目に付いた。真っ青な空。明かりの具合もいい。車の外に出た。こんどは、気合が入った。
ほんとうに引き上げ。広い農道を突っ走る。大谷川沿いの砂利道を、行ったり来たりする。やっとのことで、工事中の水門の横に出る。昼休みなのか、現場には人っ子一人いない。撮っていくか。
2005.12.31(土)晴れ。風が冷たい。番外、小畔川。九時から一時。 小畔川の吉田橋。車でよく通る橋だ。今日は、その上を歩きながら、川シモの東上線鉄橋を撮る。川が青い。とはいえ、心が動かない。あまりにも、見慣れた景色だ。 移動。ひとつ川シモ、金塀橋際から、右岸の土手道に入る。すれ違いのできない狭い道だが、舗装されている。対岸の景色を見ながら、ゆっくり走る。目の前がひらけている。気持ちがいい。 ときどき、緊急時路側帯に車を止め、シャッターを切った。河川管理事務所の電波塔、葉の落ちた川原の雑木、なじみになった鉄塔や電信柱。みな、青空へ向かって、しっかり立っている。風にあおられているのは、自分だけだ。
移動。鎌取橋を渡る。左岸。土手下の道路を、くねくねと走り、工事中の水門に出る。大晦日。現場には、誰もいない。これさいわいと、ゆっくり撮る。 旧小畔川、大谷川沿いの砂利道。道の真ん中に車を止め、外に出る。先日撮った景色を、目で探す。そんなものは、どこにもない。首をかしげながら、辺りを見回す。どうもぱっとしない。 出るときの心積もりは、大谷川の向こう側だった。広大な農地の真ん中に、工事中の橋脚が並んでいる。越辺川の流域だが、寄り道番外編だ。時計を見た。十二時を回っている。もう無理だ。寒いし、疲れている。次の機会ということにして、今日のところは、潔く引き上げよう。 車を出した。正面に、介護施設が見える。その横から回り込んで、また小畔川に戻ろう。ハンドルを切った。とたんに、幹のくねった雑木が三本、目に入った。先日は撮り損ねている。しょうがねぇ〜な。畔道に車を入れた。 外へ出た。北西の風が、はなしにならないほど冷たい。だが、目を凝らすと、遠くに、上越の白い山並みが見える。空は高く、青い。雲ひとつない冬晴れ。気合を入れなおし、撮りだした。撮れたような気がした。 ところがだ、淡い期待は、今回も裏切られた。天地のバランスが悪い。いったい、どこをみて、写真を撮っているのか。天からの叱責をこうむった。 今日で、2005年も終わり。ほぼ一年間、入間川歩行に集中した。と、いいたいところだが、そうでもない。思い起こせば、かなりの期間、ギャンブルにのめっている。ま、それでも、写真と文章に関しては、質量ともに、昨年を大きく上回った。未熟であることにかわりはないが、少しはよくなった。自負。これだけで十分だ。先は長い。
Written by sekinetoshikazu in Kawagoe Japan.
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